結婚相談所
その小さな結婚相談所を,長い間たったひとりで切り盛りしていた老所長は,寄る年波で商売を続けるのがひどく難儀になってきた。そこで彼は若い助手を雇うこととしたのである。
「おまえは,この商売について何か知っているかね」彼は新らしい助手のミケノビッチという青年に尋ねた。
「ボクは何も分かりません」新米の助手は答えた。
「よく聞きなさい」雇い主は言った。
「まず第一に,商品・・・この場合は結婚相手方の人間だが・・・について,とにかく褒めることだ。少しぐらい大げさに言ったって,言い過ぎってことはないからな。とにかく褒めて褒めぬく,これがコツだよ」
翌朝,老所長は,ミケノビッチを連れて,依頼客の家に出かけた。
途中,念のため,所長は助手によく言って聞かせた。
「今日の依頼のあった男の父親ってのは,とても金持ちだから,かなりの報酬が見込める。だから特に気をつけてくれよ。昨日言ったことを忘れるな。とにかく相手の女性の美点を誇張しろ。褒め称えるんだ。長所をオーバーに言い立てるんだぞ!」
金持ちの家の応接間に通されると,さっそく所長は言った。
「この女性は,あなたのご子息にまさしくぴったりです!たいへんいい血筋を引いていらっしゃるんですよ」
「いい血筋だなんて」助手が口を出した。
「それどころか,王家の一員なんです」
老所長は,この口出しにヒヤリとした。
王家の一員だなんて,調べられたらすぐにバレてしまう。
「それはともかく」所長は急いで続けた。
「彼女は実に身ぎれいで,指には大きななダイヤをはめていらっしゃって・・・」
「大きいだなんて」ミケノビッチがまた口出しした。
「私はこの目で見ましたが,三十カラットはありました。少なく見積もって。
しかし,三十カラットのダイヤも,あの娘さんのお顔の美しさに比べたら,石ころも同然です」
老所長は,思わずせき込んだ。
いくらなんでも,三十カラットとは大げさである。
彼は,相手の金持ちの父親が,そんな申し分ない女性がはたしているだろうかと疑問を持ち始めているのに気がついた。
「まあ,正直に言いますと」所長は,父親に言った。
「彼女も欠点がないわけではありません。実は背中にちっちゃなイボがあるんですよ」
「ちっちゃいイボですって」得たりとミケノビッチが言った。
「あれはもう,立派なこぶと言っていいくらいの大きさです」
老所長は,目つきで殺せるなら即死するほどの怖ろしい視線で助手を睨み付けた。
とにかく,なんとか事態を収拾しなければ,この上客を永久に失うことは間違いなしである。
「まだ,ございますぞ」彼は,助手の言葉なんか一言も耳に入らなかったように,金持ちに話し続けた。
「ご子息はとりわけ喜ばれることと思います。この娘さんの姿の実におよろしいこと。上から順に91センチ,53センチ,91センチでしてな」
「それどころか」熱狂した助手は叫びたてた。
「彼女のオッパイは優に112センチはありました。ウェストは100センチは下りません。それにあのヒップときたら!正味120センチは越えております!」
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