男が一人、安宿に宿泊した。
その男は乞食であったが、たまたまその日は高価な服を拾ったばかりだったの
で、安宿の主人は男が乞食である事に気づかずに安宿に泊めた。
しかし次の日、いざ金を払う段になると
男は自分が無一文である事を主人に告白した。
怒れる主人に男は言った。
「まぁまぁ皆さん。実は私はもう物乞い歴10年の達人ですので、
街で半日も物乞いをすれば宿泊代くらいすぐあつまりますよ。
少し待っていただけませんか?」
「そんな事言って、金を払わずにそのまま逃げるつもりなんだろ」
「そんなに疑うんでしたら、貴方も一緒に物乞いをしませんか?
それなら逃げる心配はないでしょう」
「お前と一緒に物乞いするだなんて、そんな恥ずかしい事できるか!!」
すると男は目を輝かせて答えた。
「そうですか。そんなに私と物乞いをするのが恥ずかしいなら、
あなた一人で物乞いをしてください。私がかわりにここで待ってますから」
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