ある高校がF県に修学旅行に行ったそうです。
A君は友達数人で作った班で自由行動を楽しんでいました。
しかし、A君は慣れない土地なのに好奇心故についつい寄り道してしまったため、
同じ班のB君と一緒にみんなから逸れてしまいました。
迷ううちにどんどん繁華街から離れてしまって、
今いるところが何処なのか分からない。
このまま途方にくれていても仕方がないので、
A君とB君は丁度目に入った古い感じの家で道を聞くことにしました。
中から出てきたのは腰の曲がったおばあさんでした。
おばあさんは2人に、家に上がってお茶でも飲んでいきなさいと言ったので、
疲れていた2人は迷うことなくそのうちにお邪魔することにしました。
その家はかなり古い感じで、壁のところどころがすすけた感じでした。
おばあさんは、2人を居間に座らせ、なぜか「目をそらしちゃいけないよ」と言うと
お茶を入れに居間を出て行ってしまいました。
2人が部屋の中を物珍しそうに見まわしていると、
部屋には不似合いな大きな鏡が目に入りました。
A君B君はなぜか2人ともその鏡から目が離せなくなっていました。
2人がその鏡をじっと見詰めていると人が朧げに映りはじめました。
明らかにその人の顔は、鏡を見ているA君、B君の顔ではありませんでした。
その映った顔は傷だらけで、血を流しています。
髪型も服も現代の人とは違いました。
その格好はまさに、昨日ある観光地での説明を受けた白虎隊のものでした。
2人はなぜかその鏡から目をそむける事が出来ませんでした。
鏡に映る人の顔はどんどん変わっていきます。
そして変わるたびに気持ちの悪いものとなっていきます。
初めはまだ顔に怪我した程度だったものが、
顔が半分つぶれた状態になってしまっていたり、
目に矢が刺さった状態になってしまっている顔などになっていきました。
ついにA君B君は悲鳴をあげて顔をそむけてしまいました。
するといつのまにか入ってきていたのか、
おばあさんが2人をじっと見つめて一言、
「そらしたね」と言いました。
2人はもう、怖くて怖くてその家を飛び出して、逃げました。
どこをどう走ったのか、2人が気づくと泊まっている旅館に着いていました。
2人は帰ってこれたことにほっとしていました。
何より次の日には修学旅行も終るので、
この土地から離れられることが嬉しかったのです。
次の日、2人は家に無事帰ることもできて、
もう昨日あった不気味なことなど忘れていました。
そしてあの日から1週間後の朝。
2人はそれぞれの自宅で、
布団の中で血だらけになって死んでいるのが見つかりました。
顔はぐちゃぐちゃにつぶれていて、
身体の傷はなぜか刀で傷つけられたものだったそうです。