昨年からインドネシア国内の地方州を統括する立場を提供して頂いている自分ですが、この地方州の統括において、2010年までのインドネシア代表ナショナルチーム統括とは異なる地方州特有の実情も多々見えて来ます・・・
加えて、ここ数日にわたり東ジャワ州代表チーム関連のブログを記していた関係も合い重なり、インドネシア地方州の強化練習のあり方について深く考えさせられ、頭中を旋回しています・・・
「恵まれ過ぎた環境」
「恵まれていることを当たり前と思うな」
東ジャワ州代表チームがインドネシア国体決勝大会に向けて使用する野球グランドや関連施設を紹介しました。
おそらく、このブログをご覧になっている皆様方においては、この東ジャワ州代表チームが使用する施設画像等などからインドネシア国内での野球の実態を、大よそのラインで創造をされているかと思います。
しかし、国内の他の州は、まだまだ、このレベルに達していないのが実情なんです。
「結果のあるところには、それなりの資金が投下され、結果が出ていないところへの資金は投下されない」
これが、インドネシアでのスポーツに対する考え方です。
すなわち「資金が必要なのであれば、先に結果を出しなさい。結果次第で検討の土俵に上げてあげますよ」・・・と、いうことです。
今回、東ジャワ州代表チームがある程度のフェシリタスを獲得できたのは、先のインドネシア国体予選大会での準優勝という結果のゆえになり、国体の予選大会に望む強化練習でのフェシリタスは、リトルリーグ用の野球グランドのみです。他の施設は用意されませんでした。
幸いとして国体予選大会での結果を持ってして1つの地方州へ野球における本当のトレーニングのあり方を位置づけることが出来たと・・・いうことになります。
しかし、やはりインドネシア全体の野球事情を考えた場合、未だ、他の地方州の中に潜んだインドネシアの野球、選手事情というものをヒシヒシと考えさせられます。
更に、この想いは、インドネシア国内から海を渡り、他のアセアン野球後進諸国にまで至っています。
例えば、自分の本拠地であるバリ島のバリ州代表チームなの事情などは・・・
「強化練習は2ヶ月あるか?ないか?」
「グランドは公共の空き地でサッカーなどでごった返し」
「最悪、大会参戦への渡航費用は選手負担の可能性も大」
・・・通常、これがお決まりです。
↑
バリ州代表チームのメンバーのグローブです。軟式用の古~いグローブを使っています。
↓
他の未発展の州などにおいても・・・
「強化練習での使用球も10個程度でボロボロな状態」
「木バットも中古が2本か1本」
「グローブは30年前くらいの軟式用のボロ中古」
「ヘルメットも軟式用の中古で中のクッションなど無い」
「キャッチャー用具も軟式用のボロ中古」
「スパイクは現地であまり売っていないため現地産サッカー用の1000円程度の安靴」
「ユニフォームの上着は現地産で1枚600円程度」
「ユニフォームのパンツは中古のジャージ」
「スライディングパンツなんて存在すら知らない」
「ソックスも穴開きのボロボロ」
・・・これが定番なんです。
紐なども現地では調達が困難なのと、日本での購入が金銭的に困難なため普通の布を革紐の代用にしています
グローブについて触れましたので補足として述べてみますと・・・
インドネシアにおいて野球を行っている選手(30歳以下の社会人)の平均給与が約15,000円。中学生、高校生などの学生については親からのおこずかい。また大学生はアルバイトなどで若干の収入を得ている者はいるが、社会人の平均給与からアルバイトでの収入額がおのずと察しがつきます。
このような経済状況の中でも野球をする以上、最低限グローブとスパイクは購入しなければなりません。この2つを比較してもやはり、サッカー用のスパイクなどの間に合わせが利くスパイクよりも、グローブに購入の比重が置かれます。
アセアン野球後進諸国の選手達の憧れは、やはり「ミズノブランド」です。
でわ、ミズノ製のグローブを購入するにしても、現実問題としてミズノプロやグローバルエリートなどは夢の中の夢物語・・・
ビクトリーステージにだって手は届きません・・・給与の何ヶ月分もするのです。
従って金額的にどうしても軟式用もしくはソフトボール用のグローブに焦点が向く訳です。
日本の皆様如何でしょう?
軟式用のグローブで硬球を継続して芯で捕れますか?
もの凄く痛いです””
単に痛いだけでは済まない深い&不快な痛さがあります。
・・・手の骨にスシンと響く、気持ち悪い鈍い痛さです。
以上の様な経緯から網での捕球に逃げ、紐が切れまくるのです。
連動してインドネシアの選手達は、未だにミズノ製のグローブには硬式用、軟式用、ソフトボール用の種類が存在することさえ知らない者が多いのも実情なんです。
加えて、冒頭に添付した硬球の画像は、このボロボロな状態で大会までの強化練習に使用します。
予算の関係で木バットが足りなければ素振り用の木バットだって自分達で作ります。
これらは他のアセアン野球後進諸国も同様だと判断致します。
このようにインドネシアやアセアン野球後進諸国では結果を出すためにギリギリの戦いをしているのです。
この画像は、東ジャワ州代表チーム作成の1本800円程度の巣振り用の木バットです
重要なことは・・・!
このような状況の中においても懸命に野球を行っている選手達がいるということです。
ブログをご覧の皆様方、Facebook内等の野球関係者の皆様方、日本の野球事情や施設事情と比べてみて如何なものでしょう?
冒頭に記した「恵まれ過ぎた環境」「恵まれていることを当たり前と思うな」・・・とは、東ジャワ州代表チームのことを言っているのではありません“”
日本の野球選手達のことです。
子供からプロ野球選手に至るまで全員です。
インドネシアの野球選手達やアセアン野球後進国の選手達には甲子園もありません。
野球が上手くても良い高校へも、大学へも行けません。
人生において、その全てに野球での成果が反映され、認知され、キャリアUPされる制度もありません。
野球で生計は成り立たず、学業成績、単位取得、資格取得が人生設計の全てになります。
野球をしていたからと言って優先的に就職が優位になることもないのです・・・
そこには、日本と全く正反対の野球(社会)システムが形成さています。
でも、彼らは野球をしています。
練習でフラフラにしごかれて「ぶっ倒れて」います。
個人ノックで「吐きまくって」います。
叩きのめされても「立ち上がって」きます。
罵倒されても「向かって」きます。
それでも、彼らは毎日グランドに来ます。
・・・何故でしょう?
「野球が好きだからです」
「野球を愛しているからです」
インドネシアや他のアセアン野球後進諸国の選手達は・・・
「最後の最後まで」
1つの球を追う「姿勢」と「気迫」は、恵まれた過ぎた日本の野球選手達には絶対に負けません。
我々、アセアン野球後進国の野球指導者と、選手達は、常に、この想いで指導をし練習をしています。
ですから・・・
日本の野球選手達は、これらの事実をしっかりと見つめ「世界レベルを目指して」野球に取り組んで下さい。
それが出来る環境に居るのですから・・・
決して、生半可な「愛心」で野球をしないで欲しい。
以上、野球をやってきた先輩として、現在、日本で現役の立場で野球をしている後輩諸君へ(野球をしている者は全て後輩です)メッセージとし発信をさせてもらいます。