先月の「題名のない音楽会」に、「地味な黒幕楽器」として、ビオラ、ファゴット、ユーフォニアム、チューバの4楽器が紹介された。
テレビでは「ラデッキー行進曲」を4人で演奏していた。ユーフォニアムは結構、高音域の主旋律を演奏しており、きれいな音だった。
地味ではあるが「黒幕」とは失礼ではないか。辞書によると「陰で指図をする人」とある。政界の黒幕は良いイメージでは無い。陰で支える楽器だ。
元NHK交響楽団の首席オーボエ奏者の茂木大輔氏によると、楽器により性格が分かるなんてえ本がある。ユーフォニアムの演奏者は総じて大人しい。表に出ず主役を引き立てる役だ。
尺八で言えば第一尺八のメロディー吹きでは無く、2尺管当たりの低音だ。
確かにトランペットは金管楽器の花形であり、クラリネットはオーケストラのバイオリンに代わるメロディー楽器である。
私は中学、高校の5年間ユーフォニアムを担当していた。
我々の頃は、ユーホニュームと称しており、小バスやバリトンの改良型である。
何故5年間かと言うと、中学2年時に父兄たちの寄付により楽器を購入して初めて「吹奏楽班」が出来たからである。(1年時は卓球班)
「吹奏楽班」に入るには、試験があった。簡単なリズムが黒板に書いてあり、それを両手を使ってリズムをとった。
担任の先生には「クラスの仕事をしてもらいたいから」と反対された。
友人はそれで諦めた(級長を務めた)が、私は「どうしても吹奏楽班に入りたい」と言って許可された。
楽器選びでは、小学生時にやった小太鼓をやろうとしたら、後輩がもっと上手かったので諦めた。
唇が厚めだから、トランペットはマウスピースから息が漏れてしまう。
クラリネットはリードが吹くときにくすぐったい。
ユーフォニアムはマウスピースがやや大きく、すぐに音が鳴って、これだと決めた。
運命の出会いであった。ジャジャジャジャーン。
入班を諦めた友人も3年時には「吹奏楽班」に入り、トランペットを担当した。その友人とは高校も同級になって、一緒に「吹奏楽班」で活躍した。
彼は実は、飯田市の長昌寺の住職で立川談四楼とご一緒(私は尺八)の企画をしてくれた人である。
ユーフォニアムは中音域を担当する、本当に素晴らしい楽器である。吹奏楽にはあるが、オーケストラではほとんど見ない。それが非常に残念に思っている。
大学に入ってユーフォニアムは考えず、持ち運びが出来る尺八と決めていた。
高校を卒業して何年か経ったときに「吹奏楽班」に行って見た時、ゆのピストンは3個から4個に変わっていた。
我らの頃は、アサガオ(ラッパ状)の部分が長く、大きく開いており、持つのにバランスが悪かった。持ち上げると重いし、膝に乗せると猫背になって姿勢が悪くなる。
中音域だと言ったが楽譜はへ音記号であるから、低音にはなる。
このへ音記号のお陰で、ピアノを弾いた時にスムーズに左手の楽譜が読めた。
チューバは大バスで、その中間の大きさに中バスという楽器もある。
行進する吹奏楽では見栄えのするスーザホンは大バスの改良型だ。
行進曲では、その低音域のグループが大概、ドソミドなどを繰り返し1拍目、2拍目を刻む。
その間にホルンなどが、ウンパウンパとやるのである。
分かったかな?
もちろんそれだけでは無く、対旋律という大事なメロディーを演奏する。
これが大事だ。
タイケ作曲の行進曲「旧友」における対旋律は、すごくきれいだ。
高音から滑らかに下ってきて、再び高音に上がって行く。言葉では難しい。
ぜひYouTubeで聞いて欲しい。
しかしそれだけでは無い、後半には、ちゃんと低音部が活躍する良いメロディーが用意されている。
中学、高校を通じてかなりの行進曲を練習してきた。
大概のメロディーを覚えているし、運指まで分かるくらいだ。
中学では「海兵隊」から「君が代行進曲」「軍艦マーチ」「立派な青年」などを練習した。
高校ではスーザ作曲の「忠誠」「ワシントン・ポスト」「雷神」「士官候補生」「エル・カピタン」「星条旗よ永遠なれ」「海を越える握手」「美中の美」など。
その他、「錨を上げて」「ボギー大佐」「史上最大の作戦」「国民の象徴」「ロレーヌマーチ」「双頭の鷲の旗の下に」。
タイケ作曲にもう一曲「ツエッペリン伯爵」があった。これも低音部の活躍が素晴らしい。ドイツらしく重厚だ。
日本人の作曲では須磨洋朔作曲「大空」やレイモンド服部作曲「コバルトの空」、古関裕而作曲「スポーツショーマーチ」など。(スポーツショーマーチはNHKのスポーツ番組の為に作曲されたそうだ)
前回の東京オリンピックは1964年で、私が高校1年生の時だった。
開会式の行進には古関裕而作曲「オリンピック・マーチ」が採用された。
名曲だが、我が高校は練習しなかった。当時のライバル校の飯田長姫(おさひめ)がかなり上手く演奏していたのを覚えている。
それでもユーフォニアムで唯一花形だったのは、高校文化祭3年時での「ベサメムーチョ」のソロであった。
いきなり立ち上がり、メロディーを演奏する。一度も座らない。最後まで立ちっぱなしである。
最後にはカデンツゥア(即興的な完全なるソロ)があり、テクニック的にも難しいが、良く選曲してくれたと感謝している。