まどろみは窓越しに伝わる165号の車のさざめきで破られる。
いつものように熟睡とは程遠い覚醒。
今日は前期選抜だ。
午前7時・・・今頃、美有は朝食を食べている頃か。
頑張ってはほしい、しかし勝負は後期になるはず。
粛々と一日を刻み、今夜からいつもの日常に戻る。
敬太を迎えに行くついでに松阪高校に出向く。
気分を奮い立たせるためにも心の栄養が必要・・・俺にとっての心の栄養、試験会場の張り詰めた空気だ。
午前8時20分、松阪高校近くのサークルKに車を止める。
駐車料金代わりにダイドーの缶コーヒーを買い、松阪高校へ向かう。
校門には『前期入学者選抜会場』と書かれた立て看板。
その前に屹立する女性の先生。
歩いてやって来る生徒、自転車で来る生徒、車で乗り付ける生徒で校門前は混雑している。
一人一人の受験生に挨拶、慣れた様子で誘導している。
校門を入った受験生はそれぞれで固まり、引率の中学の先生と話している。
寒いから中に入ればいいのに・・・観客席の俺はそう思う。
40人枠に161人が受験・・・倍率はほぼ4倍。
その高倍率ゆえに荒ぶる魂たちは寒さをいとわないのか、あるいは気にならないのか。
はたまた、先生方の怠慢か・・・。
この全ての風景、空気よ・・・へたりがちな俺に喝をくれ。
サングラスをかけてその光景を刻みつけようとする俺には、高校の先生方からの視線が痛い。
そのうちにパトカーが止まり職務質問が始まるかもしれない。
『カントリー』でモーニングを食べる。
ランチの良心さに比べるとモーニングは今年の冬以上に寒い。
ついてないことはある。
日丘団地への道を間違えつつも、気にすることなく田圃道を代車で右へ左へ。
このサイズなら娘のめい(18期生・保育園勤務)もぶつけることはないだろう。
午前9時40分に敬太をピックアップ。
嬉野へと続く弾丸道路を代車が疾走する。
松阪高校の制服の女の子、校門に近づいて高校に入れてくれと粘っている。
「だめだめ、絶対にだめなの。どっかに行ってなさい」と仁王立ちの先生。
その毅然たる態度、バイエルン城を任せられたメイドのよう・・・。
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