バイデン氏は13日、英国のスターマー首相と会談し、長射程兵器を使った攻撃を容認するか話し合う見通しだ=AP
【ワシントン=坂口幸裕】
バイデン米大統領はウクライナが西側諸国から供与された長距離射程の兵器でロシア領を攻撃することを容認する検討に入った。
米紙ニューヨーク・タイムズが12日に報じた。米国が提供した武器を使わないことを条件に認めるとしている。
ウクライナのゼレンスキー大統領はロシア領への攻撃を巡り、米欧から供与された長距離ミサイルを含む武器の使用制限を全面撤廃すべきだと主張してきた。
ブリンケン米国務長官は12日、長射程兵器の使用を認めるかと問われ「(ウクライナが)前進するために必要に応じて適応していく。
ロシアの侵略から効果的に防衛するために利用できる手段も含む」と明言した。訪問先のポーランドでの記者会見で語った。
米欧は5月、ウクライナが西側諸国から供与された武器を使い、ウクライナへの攻撃拠点となる国境付近の軍事施設に限ってロシア領内を攻撃することを容認した。
ウクライナの自衛のみに使うよう要求してきた方針を転換したとはいえ、越境攻撃を限定的に承認しただけだった。
ブリンケン氏とラミー英外相は11日、訪問先のウクライナの首都キーウ(キエフ)でゼレンスキー氏らと会談し、ウクライナ側の要望を聞いた。
ゼレンスキー氏は「米英の力強く重要な決定に期待している」と述べ、長射程兵器を使った攻撃を認めるよう促した。
バイデン氏は13日、米首都ワシントンのホワイトハウスで英国のスターマー首相と会談し、長射程兵器を使った攻撃を容認するか話し合う見通しだ。
ニューヨーク・タイムズはバイデン氏が米国の武器を使ったロシア領内への攻撃許可をためらっていると報じたが、米野党・共和党の上院指導部からも使用制限の緩和を求める声が出ている。
バイデン氏は2022年2月にロシアのウクライナ侵略が始まった当初から、ロシアの反発を招いて事態がエスカレートしないよう供与する武器や使用条件を熟慮してきた。核保有国である米ロが戦火を交えれば第3次世界大戦に発展するおそれがあると懸念するためだ。
ロシア領への攻撃をさらに緩和すれば、ロシアは強く反発しかねない。
同国のプーチン大統領は12日、米欧から供与された長射程兵器によるロシア領への攻撃を巡り「容認されれば北大西洋条約機構(NATO)諸国がロシアと戦うことを意味し、紛争の本質を変える」と警告した。
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