太古の人類の祖先が骨角器に残した痕跡を調査する研究者
(CNN)
考古学者らがタンザニアの北部で骨角器の一群を発見した。太古の人類の祖先が150万年に成形したもので、これまで知られる最古の骨角器より約100万年古い。新たな研究で明らかになった。
過去に発掘された最も古い石器は少なくとも330万年前のもの。これに対し骨角器で最も古いのは欧州で見つかった25万~50万年前のものと考えられていた。
今回見つかったのは四肢骨の骨片27点。ほとんどはカバとゾウの骨で、先をとがらせて成形した痕跡がみられる。
石器を使ってそのような加工を施した公算が大きい。中には長さが38センチ近くに達する骨もある。
見たところこれらの骨角器は、同じ様式で体系的に作られている。骨角器が見つかったタンザニアのオルドバイ峡谷からは、初期のホミニン(ヒト族)が作った最古の部類の石器に関連した遺物も出土している。
ホミニンは直立歩行していた人類の祖先だ。
新たな発見についての論文は、5日刊行の科学誌ネイチャーに掲載された。
その内容によると、太古の人類の祖先は石器を作るのと同じ技術を大型哺乳類に由来する特定の骨角器を作る際にも応用していた。
そうした骨角器の存在は、大昔のホミニンが革新的な技術を別の素材に活用できるだけの認知能力と精神構造を備えていた証拠になると、研究者らはみている。
タンザニアのオルドバイ峡谷から様々な大きさの骨角器27点が出土した
初期人類にまつわる遺物が多く出土することからオルドバイ峡谷は「人類のゆりかご」の異名をとる。
ここから初めて骨角器が発見されたのは2018年。15年から22年にかけて行われた発掘作業中のことだった。
個々の骨角器で最も大きい種類はゾウの骨で長さ22~38センチ、幅8~15センチ。カバの骨を使ったやや小さめの骨角器は長さ18~30センチ、幅6~8センチ。
同じ加工技術が施されたこれらの骨角器は、死んで間もない動物から採取した骨でできている。
こうした遺物が、ほとんど未知の領域だった初期ホミニンの骨加工技術に新たな光を当てると、論文著者らは述べている。
大型哺乳類の骨には石器を使って縁を鋭くするなどの加工が施された
従来の骨角器は、欧州やアジア各地の孤立した事例として出土していた。しかしオルドバイ峡谷で見つかった上記の27点は、骨角器が大量生産されていた状況を示唆すると、論文著者らは指摘する。
欧州で見つかった40万年前の骨角器一式は格段に洗練されているが、論文の共著者で米インディアナ大学地球・大気科学部のジャクソン・ンジャウ准教授によれば、オルドバイ峡谷の骨角器の方が過酷な使用に耐えるという点でより効果的な道具だったという。
実際に骨角器がどのように使われていたかを示す直接の証拠はないが、研究者らはホミニンがそれらを使って動物の死体から肉を切り落としたり、新たな道具を作っていたりしたとみている。
骨角器とともに見つかったホミニンの化石はないため、人類の祖先のうち具体的にどの種がこれらの骨角器を作ったのかは分からない。
しかし過去に現地で行われた調査は、「ホモ・エレクトス」と「パラントロプス・ボイセイ」の2種のホミニンがかつてこの地域に暮らしていたことを示唆している。