激戦州である東部ペンシルベニア州で14日に演説したハリス副大統領=ロイター
【ワシントン=飛田臨太郎】
米民主党の大統領候補であるハリス副大統領の陣営は14日、黒人男性に特化した支援策の公約を発表した。
起業のための金融支援などを柱とする。
過去の民主党候補に比べて黒人の支持が伸び悩んでおり、11月5日の投開票日を前に焦りが見え始めた。
「黒人男性のための機会のアジェンダ」と題して公表した。黒人の企業家が事業を立ち上げる際に、100万件の小口融資を提供する。
暗号通貨を利用することの多い黒人向けに資産保護の規制を策定すると約束した。
嗜好(しこう)用の大麻を合法化することで、過去に大麻の使用や販売で投獄された黒人男性が社会復帰しやすくする。教員資格の取得も後押しする。
米紙ニューヨーク・タイムズの最新の世論調査によると、黒人のハリス氏への支持率は78%で、共和党候補のトランプ前大統領の15%を大きく上回る。
2016年大統領選のヒラリー・クリントン候補(元国務長官)と20年のバイデン候補(現大統領)がそれぞれ9割の支持を得ていたのと比べると低い。
男性からの支持の伸び悩みが特に大きい。黒人男性は70%がハリス氏支持で、20%がトランプ氏だった。女性は83%がハリス氏、12%がトランプ氏だった。
黒人有権者が重視する「物価高」への対応では、トランプ氏の方が比較的、評価されている。
ハリス氏は女性、黒人として初の副大統領となり、黒人から人気があると目されていた。
バイデン氏から民主党候補を差し替えてから、勢いを回復したものの、民主党が想定していたほど伸びていない。
ハリス陣営は15日にも黒人有権者向けのイベントを開催するなど、巻き返しを急ぐ。
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日本経済新聞社 客員編集委員
①いくら焦ったからといえ、押っ取り刀の感は否めません。
大麻の合法化で、過去に大麻の使用や販売で投獄された黒人男性の社会復帰を後押しするーーといっても、どれだけ雇用創出に役立つのか。経済に弱いと晒すだけなのでは。
②支持率不振の根っこには、ミルク、牛肉、ガソリンなど生活に響く物価の動向がある。
バイデン大統領が撤退表明した7月下旬から沈静化しつつあったのに、9月末からこれらの物価は上昇に転じている。
それに対して、有効な手立てを打っていないとの不満が。
③直近のRCPでは、7つの激戦州のうち、6つが僅差ながらトランプ氏優位に。
不得手な経済と外交に焦点が当たれば、ハリス氏への逆風は一段と強まるように。
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カマラ・ハリス副大統領に関する最新ニュースや発言・解説などをお届けします。2024年のアメリカ大統領選挙でバイデン大統領の出馬断念をうけ、民主党の候補者として出馬します。