雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

どつぼ

2009-01-16 | 雑記
 先週の土曜日から背中の筋が違って体の動きがままならない。左の、首から肩甲骨にかけて。

 車をバックさせる際、おかしな具合に振り返ったのが原因とみられる。歳のせいだろうか?
 
 日々、アンメルツヨコヨコでその痛みを紛らわせてみるものの、一向に治る兆しがみられない。歳のせいだろうか?

 今日も今日とて、仕事を終えひとっ風呂浴びた後、右手にアンメルツを構え首筋、肩、肩甲骨へと薬液を走らせた。

 ら、ららら・・・なにやら右腕が無茶な方向へと動き、右肩辺りが「ピシッ」と。

 半泣きになりながら妻に「す、すまん、右肩に塗ってくれ・・・」と懇願。

 妻は阿呆を見る目で「なにやってんの?」

 私は歪な笑顔で「どつぼにハマってる・・・」

 最初から「塗ってください」って言えばいいのに、と嘲る妻に軽く頷き、

「歳のせいかな?」と微笑って訊ねると、

「歳のせいだな」とあっさり肯定された。

 
 背中全域にアンメルツの冷ややかさを背負ったせいだろうか?それとも、妻の容赦ない冷ややかな一言のせいであろうか?

 私は身震いしながら、少しだけ、泣いた。

 

 
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あの空の下で/吉田 修一

2009-01-16 | 小説
≪ANA機内誌『翼の王国』に掲載された短編を書籍化。数々の文学賞を軒並み受賞した吉田修一、初の読みきり連載小説&エッセー集。
1編ごとに異なる主人公の些細な日常を、胸が詰まるほどリアルに表現した12の短編小説と、世界の旅エッセイ6編を収録。≫

 吉田修一のポジティブサイドな短編集。(機内誌なのであまり重たい話をされてもなんだろうけど)
 スッと心を駆け抜けてくお話あり、じんわり泣けるお話あり、新たな決意を宿すお話あり、と多彩な顔が見え、飽きることなく次々と読み進められる。

 そしてなにより、短編の合間に挟まれた作者自身の旅エッセイ。これがまたすんなりとその土地の情景が浮かびあがり、また吉田修一という人間の思考が垣間見えてひじょうに心地良い。

 これを読んだ人は必ずや、「フラッ」と旅に出たくなるであろう、そんな一冊。

 未だ海外旅行と縁がない私にとって、羨ましい限りの旅物語の数々に、はやる気持ちが溢れ出さんとしている。
コメント (2)
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疾走/重松 清

2009-01-16 | 小説
 私の読書人生の中で、上位ベスト3に位置する不朽の名作。
 再読なのに、またこれほど胸を打たれるとは・・・と、本当に、本当に圧倒され感動しました。どこまでもついていきます、重松清。

 それにしても、かなりインパクトのあるこの表紙。ホラーか?と思われてもおかしくないこの表紙。確かに最初はこのインパクトについつい手が伸びたのだけれども、眺めていると次第に恐怖感を覚え、それを通り越すと嫌悪感すら湧き上がってきたものでした。
 が、しかし、ページをめくり、そのひとりの少年の物語に浸ってゆき、最後に涙を流しながら、あらためてこの表紙に触れると、もはやそこには嫌悪感など存在せず、どうしようもない哀しみ切なさ、そして慈しみを感ぜずにはおれず、ついには美しさすら見出せる。

 この本は、本当に、なにもかもが私の心に突き刺さってくる。そして何度読んでも、心が突き動かされる。

 こういう名作を、是非とも十代の若者たちに読んでもらいたい。今、解からなくてもいい。それでも絶対に、その中の何かが残るはずだから。そしてそれは、いつか必ず、そのときが来たときに、心を動かす響きになるから。
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