雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

硝子のハンマー/貴志 祐介

2009-01-27 | 小説
≪見えない殺人者の、底知れぬ悪意。異能の防犯探偵が挑む、究極の密室トリック!「青の炎」から4年半、著者初の本格ミステリ!
日曜の昼下がり、株式上場を目前に、出社を余儀なくされた介護会社の役員たち。エレベーターには暗証番号。廊下には監視カメラ、有人のフロア。厳重なセキュリティ網を破り、自室で社長は撲殺された。凶器は。殺害方法は。すべてが不明のまま、逮捕されたのは、続き扉の向こうで仮眠をとっていた専務・久永だった。青砥純子は、弁護を担当することになった久永の無実を信じ、密室の謎を解くべく、防犯コンサルタント榎本径の許を訪れるが―。≫

 これ読んで気付いた自分の『密室』に対しての思いは、どれだけすごい「密室トリック」よりも、何故「密室」にしなければならなかったのか?何故「密室」になってしまったのか?ということに重点を置いてある『密室モノ』が好きなんだなぁ、ということだった。
 だから、この作品は、単なる私のわがままなのだが、そういう観点からすると、長いわりには幾分、不満の残る『密室モノ』だったなぁ…と。

 それでも後半(二部)は、あの名作『青の炎』を彷彿とさせる犯人の犯罪までのプロセスや手順が書き込まれていて非常に興味深かった。興味深いけれど、実践は不可能だわ。

『黒い家』や『青の炎』で人間の狂気を鋭く描いた作者にしては、いまいち犯人の動機が薄いような気がしたのは、やはり本格ミステリに徹したせいかな?やっぱり貴志祐介はホラーのほうがいいのかしら?

 それでも、これほどの『密室トリック』を考えだすのは容易ではなく、やはり凄まじいばかり。どうやらこの、女性弁護士と防犯コンサルタントのコンビで短編集が出ているらしいので、そちらが楽しみ。

 
コメント (4)
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