雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

ねたあとに/長嶋 有

2009-03-10 | 小説
≪この山荘は、遊び始める前から、すでにルールが発生している。真夏に炬燵。ケイバ、顔、それはなんでしょう、軍人将棋…魅惑的な日々の「遊び」が、ひと夏の時間を彩ってゆく、大人の青春文学。朝日新聞連載の本格長編小説。≫

 かなーりゆるーく話が始まって、何が起きるのかと思えば、とくに何も起きない。ただ、遊んでる。山荘に集った大人たちが、既製品ではない、自ら編み出したオリヂナルな遊びを繰り広げてる。そんな小説が面白いのか?これが、また、すこぶる面白い。ってか、ホント羨ましくなる。なんか、もういい大人たちが都会の猛暑から逃れて、涼しい(ときにうすら寒い)山荘でだらだらと過ごす夏。
 なんていうか、プチデカダン?的な雰囲気がひじょうに心地良い。憧れる。

 麻雀牌を使用した競馬や『顔』と名付けられているサイコロゲーム。センスを試される『それはなんでしょう』、ナガヤマ家オリヂナル『軍人将棋』。そして『ダジャレしりとり』。これ読んだ大人たちは絶対にヤリたくなる。

 太宰治の『人間失格』の中で、「喜劇名詞、悲劇名詞の当てっこ」なる遊戯があったのだけれど、そういうのを彷彿とさせる。

 つまりは、如何に遊べる大人になれるか、だ。

 文章全体からも作者特有の「遊び」が滲み出ていて、とにかく笑いがこぼれる。
 
 相変わらず、時折出てくる漫画関係の記述など、いちいちツボを突きまくっていて、まずヤラれる。

 つまりは、この本自体が「大人の遊び」となっている。

 これは間違いなく、長嶋有氏の傑作だ。
コメント (2)
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