雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

君は永遠にそいつらより若い/津村記久子

2008-08-14 | 小説
 第二十一回太宰治賞受賞作。

≪身長175センチ、22歳、処女。いや、「女の童貞」と呼んでほしい―就職が決まった大学四年生のだるい日常の底に潜む、うっすらとした、だが、すぐそこにある悪意。そしてかすかな希望…?≫

 
 これは、素直に面白くて、素直に切実で、素直に哀しみ溢れるお話でした。辛辣な文章にニヤニヤしつつも、その隙間に見え隠れする人間の卑しさ、驕り、哀れさがその身を締め付ける。

 この処女作からすでに津村女史の空気は完成されていて、その後の『カソウスキの行方』『ミュージック・ブレス・ユー!!』へとユルリユルリと流れてゆく。

 彼女の描く主人公に共通した『ぐだぐだ』的な考えは呆れを通り越して、本当に愛おしくなる。

 他人には理解しがたいかもしれないけれど、自分自身が秘かに培っているかすかな希望。自分でも馬鹿馬鹿しく思えるときもあるけれど、その胸に宿った希望は、生きていくうえでとても大切な力になりえるのだと、思う。そんなことを、ゆる~いカンジで教えられた、ような気がする。
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