雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

ヤイトスエッド/吉村 萬壱

2010-02-22 | 小説
 自分が目指していた文学がここにあった!

 そんなカンジのヤイト(灸)スエッド(据えっど)。
 
 さて、六つの短編が収録された本書。一応その統一性は「かたくななまでに変な女たち」を描いている。いや、もう、「変」っていうより、凄まじい。危険。(あ、一話目の「イナセ一戸建て」は女出てなかったか?)

 しかしながら、この吉村萬壱という作家さん。かなり好みが二分される人。それも極端に。
 たぶん、好きな人はとことんこの作家を好きになるだろうし、嫌いな人はとことん嫌悪するみたい。そりゃ、まあ、とことん汚物と精液まみれの本だし。そんな作家(本)を「好きだー」って公言する奴はあんまりいないわなー。まあ、オレは声を大にして言うけどね。

「萬壱サイコー!!」

 さて、冒頭にも書いたように、自分は「これこそオレが求めていた文学である」と思ったのであるが、それは表題作の「ヤイトスエッド」ではなく、「不浄道」という作品である。この作品は、もうとてつもなく、汚い。ここに書くのも憚られるほど……と言いたいところだが、もはやここで憚るものなどないのが切ない……まあ、あれだ、ウンコ喰ってる(笑)

「ウンコを喰う」というのは、果たして愛の証明なのであろうか? 愛する男のウンコを喰って、その後「ニッ」とウンコの付いた歯を見せて微笑む女を今まで通り愛せるだろうか?
 それはまさに、
 スカトロカタストロフィー
 と言ったところだろうか。
 
 などと文字を大きくしてまで書いたのはいいが、この小説の本質はそういうことではない。単に私がスカトロ描写が好きなだけ。

 まあスカトロだけじゃなく、えげつないホモセックスや執拗な性癖、野口五郎、痰、等々生理的に受け付けない描写が多いのだが、何故だか自分は「汚ねーなー」とか思いつつも、自然と受け入れてしまっている。それはきっと、私が変態だからだろう。

 ともかく、普通ではあまり絶賛されるような本ではないので、せめて自分だけでも絶賛したいと思う。そしてこれからも汚物まみれの潔い(なんかヘンな表現)文学を突き進んでいってほしい。と、切に思う。
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