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雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

盤上の敵/北村 薫

2010-06-22 | 小説
 今まで、北村薫と高村薫と栗本薫の区別がなかなかつかず、ごっちゃになっていた。それはひとえに、このお三方の作品をひとつも読んだことがなかったからであろうと思われる。ともすれば「マークスの山」は誰が書いたのか判らないといった始末だったりする。
 だが、このたび「盤上の敵」を読んだことによって、まずはお一人様クリアーになった、と思う……。少なくとも去年お亡くなりになったのは栗本薫さんであるということはしっかりと覚えておいたほうがいい。

 さて「盤上の敵」。タイトルからも推察されるようにチェスゲームをモチーフにしたミステリー小説。なのだが、実は自分が想像していたような内容とはいささか趣向が違っていた。別にここで自分の想像を披露することはしないが、ともかくそれは、いい意味での裏切りであってすこぶる物語を愉しめた。どんでん返しにはもちろん、手放しで悦びを甘受したのだけれど、それよりも凄いな、と思ったのが所謂、ストーリーの配置。一体これはどういった具合に進んでいくのか? その謎にぐいぐい引っ張られていく。そして事件の全容が見えたと思った、そののち、どーん! とくるどんでん返し。まさに絶品とはこのことではなかろうか。
 すなわち、序盤からの絶妙なストーリーの配置、そして中盤での攻防から終盤に至って、逃げ場の無いチェックメイト。読者にとっての「盤上の敵」とは他ならぬ作者北村薫であり、そしてものの見事に惨敗させられるのだ。とても気持ち好く。
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