雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

さつき断景

2007-05-20 | 小説
 一月十七日、阪神淡路大震災。三月二十日、地下鉄サリン事件。
 あの一九九五年から二○○○年までの世紀末、われわれはどう生きてきたのか?
 
 大震災のボランティアに参加した高校生タカユキ、電車一本の差でサリン禍を免れた三十五歳ヤマグチさん、長女が嫁ぐ五十七歳アサダ氏。彼らの六年間の「五月一日」を定点観測し、各世代の「今」を問う斬新なクロニクル小説。

 うーん・・・って、これ、文庫の裏表紙に書いてあるあらすじなんですけどね、これだけ読むと、なんかムツカシイ社会派小説かなー?とか思ってしまいましたが、読んでみると、そんなことはなかったです。相変わらずの重松節で、非常に読み易くて、それでいて、ちょこちょことその当時に起こった事件などを交えながら、所謂「フツウ」の範疇の「フツウ」の登場人物たちの「五月一日」を描いています。ここでいう「フツウ」とは、特に何かと戦うヒーローや、突拍子もない出来事に翻弄されるヒロインなどの『小説』という読み物からすれば、という観念からであって、実際の生活においては何かしらの出来事というのはあるもので、でも、それは日常の範疇に埋没してしまうような、誰にでも起こりうる、また、経験のある「フツウ」です。
 そんな「フツウ」の中の三人を通して、「フツウ」ではない事件や災害、事故が蠢く「今」の日本を暴き出していきます。
 とても、巧みに。流石、重松!といったカンジで。

 やはり重松清氏は優れた社会派作家でしょうね。本人は否定しているみたいだけれども(笑


 と、こんなところで、私のクロニクル。

 一九九五年、成人式でした。この頃まだ成人の日は一月十五日でしたね。その二日後に阪神淡路大震災。こちらでもかなりの揺れを感じてかなりビビったことは忘れられません。その後のテレビの映像を見て愕然としたことも、忘れられません。
 そして三月。地下鉄サリン事件。この映像は当時働いていたケーキ屋さんのテレビで見ていて、「どうなってんだ?なんなんだ?これは?」と不穏な日本に身震いしました。で、そのこととは関係ないんですが、四月にそのケーキ屋さんを辞めました。
 それから一年、プータローを決め込んで、一九九六年、コンビニでバイトを始めます。そこでお客として来ていた現在のカミさんと知りあった、と・・・・どうもこの辺から道が外れていったようです・・・・。そのまま六年間もコンビニでバイト続けるとは思ってなかったし、さらには結婚までしちゃうとは夢にも思っておりませんでした(哀

 まぁ、それで、二○○○年に至るまでには、様々な出来事が山盛りでしたが、そのお話は、またの機会に、ということで。

 
 ようするに、この『さつき断景』を読んでいると、自分自身の一九九五年からの記憶も甦ってくるという、素敵な一冊でなので、あります。
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2 コメント

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あら。 (ダラ子)
2007-05-20 19:17:32
重松さん、好きだけれどこの子は知りませんでしたー。
文庫本になっているのですか?気になるっ。
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ダラ子さん♪ ()
2007-05-20 22:23:37
確かダラ子さんは『流星ワゴン』がお好きなんでしたよねー☆
この子は『流星~』とは少し毛色が異なりますが重松氏の「あの」感触は充分に感じ取れる作品です。

祥伝社文庫から出ておりますので、是非お探し読んでみてください(^ω^.)
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