この前の芥川賞受賞作。そういえば昨今、あまり私小説を書く人というのは少ないように感じる中で、これはまたかなり無頼な私小説作家の登場である。
自分的には私小説作家といえば「檀一雄」であるが、この西村氏、なんとも久方ぶりに心を揺さぶる私小説作家であった。
檀一雄もそうであるが、たいていの私小説作家はみっともない。もう、なんか人間として駄目な具合である。だがしかし、それこそが人を惹きつけ魅了する。
「無頼漢」。嫌いな人は嫌いであろうが、少なからずの憧れは誰もがもっていると思う。自分はその憧れがめっぽう強いのかも知れない。それか、「自分はコイツよりはマシだな」と安堵したいのかも知れない。
こういったズタボロ感漂う私小説というのはひとつ間違えれば鼻持ちならない態に陥ることも多いが、この小説は特に悲愴になるわけでもなく、だからといって明日への活力、人生の素晴らしさなどを謳ったお為ごかし的なものもなく、そこにあるのは少しのユーモアと生きてく厳しさだけである。それがとても受け入れやすかったので、すぐにこの作家の他の本も読んでみたくなった。
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