ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

三つの小さな王国

2009-02-05 00:45:57 | Weblog
スティーヴン・ミルハウザー著、柴田元幸訳、白水uブックス―海外小説の誘惑 (新書)

形状は「新書」だけど、通勤電車で読むには適していなかった。
新幹線で東京→新大阪くらいなら、いいかも。

つまり、文章のテンポが「サクサク」というわけではないし、
情景描写も細かくてイメージすることが多いので、
切れ切れの時間で読むような文章ではなかった、と思う。
総じて、とっても丁寧な文章だし、独特の雰囲気のある内容だった。
取り上げているのが、漫画、文章、絵画だったし、じっくり読むべき小説だったと思う。

そもそも、文章は集中して読むべきものだけれど、
「あ~、誰か咳をしてるなあ。インフルエンザ、うつさないでよ」などと
頭の片隅で思ってしまうと、この小説の魅力は半減。
ただの冗長な文章に変質してしまうから困った。

家で読むべき文章なら、単行本で、開いておけるほうがいいんだけど・・・、
ついでにポイントも大きくして、行間をあけてほしい・・・、
などと、贅沢なことをときどき思いながら読むしかない。
まあ、それで価格が高くなったら、買わないだろうけど。
そこが難しい。

もし、
・より多くの人の目にとまるようにと考えられた結果の、内容とタイトルのミスマッチ
・営業の視点に引きずられた、ちょっと的外れな帯の文句
・主に書店の棚の確保と、コストに影響された文章に適さない書籍の形状(製本、本文組版すべて)
という要素に、編集者が束縛されなかったら、本当の本のファンだけが残って、
いろいろと淘汰されて、結局は出版界全面じり貧なんてこと、ないんじゃないだろうか・・・。
そんなに簡単じゃないかな。

いつの間にか、本も「消費物」になったということか。

今日会ったアニメ界のおじさんが、こんなことを言っていた。
「最近、電車に乗ると、みんな携帯で何かをやってるよね。
 主婦みたいな人も、携帯でゲームをやってるでしょ。
 それにDSをやりながら、駅のフォームを歩いている人もいるよね。
 あとは、満員電車でも週刊のマンガを読んでるでしょ。
 たま~に、電車の中で本を読んでる人を見ると、
 この人、まともだな~って思うよね」と。

私は電車の中で本を読んでいるけど、自分がまともだとは思ったことがないなあ。
どちらかというと、時代にのれない「まともじゃない人」に含まれると思ってた。