ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

臨床真理

2009-02-11 23:36:20 | Weblog
柚月裕子著、このミス大賞受賞作、宝島社刊

まず読み始めて思った第一印象が、テンポのいい文章だな、ということ。
私は女性の書くミステリーがあまり得意ではなかったのだけど、
この作品は「ぱきぱき」進んで行く印象で、とてもよかった。

テーマは臨床心理士ということで、
最近、孤児院とか、精神病院とか、そういったところを背景に書く
ミステリーが流行っているのかな、と改めて思った。
非日常の環境というものが、
今の日本だと、そのあたりにしか残されていないのかもしれない。

後半になると、簡単な暗号解読も出て来るし、
密室殺人こそ出てこないけれど、ミステリーの醍醐味はてんこもり、
という感じだった。
いくつか「違和感」が残る部分もあったけど、
全体としては、とても面白い小説だった。

私が通っていた小学校には特別学級があり、
ときどき、そこの生徒と交流する時間があった。
最初は、仲良くなれたらいいな、と思いながら話しかけるのだけど、
いつも意思の疎通ができなくて、だんだん諦めていったことを思い出す。

誰かとコミュニケーションをとろうとするとき、
相手が、こちらの望むような態度や、予測した範囲でのリアクションをくれないと
だんだん疎遠になっていくというのは、誰に対してでも同じこと。

特に社会人になってからは、仕事で接する人の背景などを、ほとんど知らない。
知らないうちに傷つけていたり、傷つけられたりする。
非日常は、常にそばにある。