ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

となり町戦争

2009-10-06 23:18:33 | Weblog
三崎亜記著、集英社文庫

先日読んだ『廃墟建築士』が面白かったので、この本を読んだ。

作家さんのうち、たま~に、この人の読書の趣味は、
5~6割、私とかぶっているのではないか、と思う人がいる。
三崎さんは、私が勝手にそう思い込んでいる作家さんの一人。

Amazonに書かれているレビューを見ると、そんなに評価は高くないようだ。
でも、私からすると五つ星。
この人が本当に書きたかった点を強調するために、
あえてこれ以上は書かなかったのではないかと、
好意的に解釈した部分がかなりあった。

戦争を背景にしたメロドラマを望んでいるような人からは、
当然、評価が高くはならないだろうし、
読後スッキリしたい人には、もっと向かないだろう。

でも、私は、夜中の台風の実況テレビに、不謹慎にもワクワクしてしまう人間だし、
湾岸戦争の実況をテレビで見ながら、普通に美味しくご飯を食べていた世代だから、
自分や日常にある「怪物」のような何かを、
乗り越えたい、乗り越えなければならない、という気持ちはどこかにある。

でも、友人と語って考えを整理したり、
ちょっとした行動を起こしたりもするんだけど、
どうも手応えを感じることができなくて、スッキリできない、という気持ち。
しょせん、生きている人間は、死んでいった人の代弁をすることはできないのだ、
という無力感。

そんなことを、もう一度、心の中に浮かび上がらせてくれる、こういった本は、
本当に好きだなあ。

ちょっとした限界

2009-10-06 00:15:24 | Weblog
ある人がよく「モノを作ったことのない人は、作ってる人の苦労がわからないんだよ~」と言う。

それは、もっともだ。

いいや、もっと言うと、
他人の苦労はしょせん他人事だから、クリエイターだろうが、一国の総理だろうが、
幼稚園生だろうが、ほんとのところはわかるわけがない。

「私の苦労をなんだと思っているの!」と言いたがる人をみると、
「あ~、もうわかったから。えらい偉い。でも、しょせんは他人事だから」と
冷たく言い放ちたくなってしまう。
私は性格がひねくれているのだろう。

苦労していない人なんていないんだからさ。
世の中、苦労のタネは、それこそ人口よりも多いくらいあって、
その見え方も人それぞれなんだから。

そして、苦労に偉いも偉くないも、重要もへったくれもない。

だから「自分を特別な人間だと認めさせなければおさまらない」というような発言は、
カッコ悪いからしなければいいのに。
というよりも、しても意味がないと思う。

「自分は偉い、凡人とは違う才能をもっているのさ!」という自意識が見えた段階で、
周囲の人はその人に対する配慮をストップすると思う。
なんで、そんな見下してくる人のことを尊敬してやらねばならないんだ。と思うし、
そもそもあなたは、私のこともひっくるめて、凡人にはわかるまい!と決めつけているんだから、
それに抗って、そんなことないよ、わかるよ、なんて言ってもしょうがないしね。
そんなの気持ち悪い。と、私は非常に冷める。

そのあたりの私の心理すら想像できずに、そんな同意を求めて来る人に出会うと、
このあたりが、この人との付き合いでのちょっとした限界かもしれないな、と思う。

私も、違うところで似たような発言をしてしまわないように、気をつけよう。