ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

天の目

2012-10-16 23:39:30 | Weblog
今日は日帰り出張で蘇州。
これまでに蘇州は何度も行ったことがあるけれど、すべて仕事。
今度は観光がしたい。

帰りの高速鉄道の車窓から見えた夕陽。
雲と重なって、まるで、天から誰かの目がのぞいているみたいに見えた。



でも不思議とこわくなかった。

昨晩、1冊読み終えた。
『邪悪なものの鎮め方』(内田樹著、バジリコ株式会社)

「邪悪なもの」と言ったら、自分の心。
抑制がきかず、怒ったり、すねてしまう心。

先日ある人生の大先輩が
「歴史というのは、なぜそのときに、その人は、その選択をしたのかを考える事が大切なんだ」
と言っていた。

この本には、まさにそんな感じのいろいろなエピソードが語られていた。
内田さんの文章には、確か以前エマニュエル・レヴィナスの本で出会った。

レヴィナスは、なぜナチの強制収容所から生きて返ったのが自分だったのかを、
死んだのが自分ではなくて隣人なのかを考え続けていた。
そこにもきっとなんらかの選択があったから生き残ったはずだと思うのは部外者で、
当事者はそんなふうには感じられないようだった。

でも、生き残ったのなら、何かを伝えなければならない。
自分が受け取ったバトンを誰かに渡すこと。

レヴィナスも、内田さんも、その人生の大先輩も、同じことを言っている。
あるところまで突き抜けると、同じことを言うようになるのだろうか。

最近、生活がざわついていて、読書をする時間があまりとれない。
少し穏やかに何かに向き合う時間をつくるようにしよう。

再び出会う

2012-10-16 00:20:07 | Weblog
いまから20年以上前に、中国から日本に漆の研究に来た
留学生の方と話をする機会があった。

おそらく初めてまともに話をした中国人としてはあの人がはじめてで、
いかにも中国の文人という雰囲気の人だった。

「漆の技術は中国から日本に渡ったけれど、いつのまにか日本の技術は
 中国の技術を超えました。そういうものは他にもありますね。
 漆は英語でJapanです。でも、陶器は英語でChinaです。
 陶器の技術については、やはり中国は素晴らしいですよ」と言われた。

私は、陶器が好きだったので、
白地にコバルトの青で絵が描かれている壺や皿が好きだと言った。

するとその人は、こう言った。
「中国の文化や社会は、宋の時代に最高を迎えたんです。
 陶磁器も同じ。
 青磁や白磁は、これ以上ないほど美しいのに、
 そのあとに中国を制覇した元は、その上にコテコテと絵を描き始めた。
 明や清になると、西方との交易品として、ますます人気が高まり、
 景徳鎮は世界的にも有名になりましたが、
 やはり中国人にとって最高の焼き物は、青磁と白磁です」と。

赤と龍が踊り狂うような印象のある中国でも、そんなことを言う人がいる。
しかし、実際に中国に来た後、こんなことを語る中国人には会ったことがない。

昨日は、日本人と中国人が協力して開いた「歴史勉強会」だったのだけど、
そこで講師役を務めた日本人が、
「宋の時代が中国で最高。当時の世界のGDPの半分を占めていた」と言った時、
先に書いた中国人の言葉を思い出した。

今の若い中国人は、ものすごいエリートであっても、
まるで初めて聞く解釈のような顔をしていたので、
正しく自国の歴史を認識していないのではないかと思った。

人生はループする。
あるとき印象的に受け止めた言葉には、またいづれ必ず出会う。