ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

空想

2012-10-29 23:19:23 | Weblog
週末「外こもり」をテーマにした本を読んで、落ち込んだ。
日本に居場所がなくて、外国でダラダラうだうだ暮らしている日本人を紹介している。

ううう。まさに私のことだ。

「いやいや、ちゃんと働いているから偉いよ」と言ってくれる人もいるけれど、
日本から脱落してしまったことは確かなわけで、
それに、いまから思い返すと、
私は一度も日本の水準には乗ったことがないような気もしてきたりして、
ああ、私ってダメな人間なんだなあ、と思うわけだ。

いろんな生き方があっていい、というのは、自他ともに建前に過ぎないから。
私だって、他人の生き方をそんなに許容できるわけじゃなくて、
そもそも受け止められないから、逆に居場所がなくなったわけで、
ということは、不寛容だったのは社会じゃなくて自分ということになり、
やっぱり救いようがなく、自分に嫌気がさす。

でもまあ、そう簡単に性格はなおらないから、
現実逃避に違うテーマの本を読んでみよう、ということで、
久しぶりのフィクション。
『果しなき流れの果に』(小松左京著、角川春樹事務所刊)

この作品の後ろには、途方もなく理不尽な現実が横たわっているんだろうと思う。
文章とは、自分が経験し、考え、悩み、そして、その中から見つけたことしか、
結局は描けないのだと思わされる。
作家は、目の前の現実から、新たな現実を編む。
これは、私の世代の日本人では、もう描けないであろう作品。

大きな銀河の、途方もない時間の流れを、きっとずっと考えて来たんだろう。
自分の身体のすぐとなりにある現実とともに。
目で見たもののと、空想の境目がわからなくなるくらいに。

たとえ、ノンフィクションであっても、
作家個人の認識の世界からは逃れられない。
まったくの客観世界はない。
だから、すべての文章は、話半分でいいのだった。

ああ、いま揺れた。
地震がないはずの上海が、少し揺れた・・・ような気がした。

せっかくだから、もっと空想を楽しもう。