「あ、、マジマさん、さっきはどうも〜、、」私は軽い調子でマジマさんに挨拶をした。マジマさんは、大抵の場合微笑んでいる優しげな子。そして、何度か書いているが、とても素朴。身長は、高い。私は小さいほうなので、マジマさんと話す時は軽く見上げる感じ。
「○原さん、部屋に来ませんか。実家から薄皮饅頭を送ってきたんです。」薄皮饅頭はマジマさんの地元の名産品。嬉しい!薄皮饅頭大好きだ!、、しかし、残念な事に今さっき、右隣のシロキさんから紅茶とシフォンケーキをごちそうになったばかりだぜ、、。腹はまだ膨れている。だが目の前でニコニコ笑っているマジマさんの顔を見るとせっかくの誘いを断る気にはなれない。というわけで、自分の部屋に戻る事なくそのままマジマさんの部屋へ、、。マジマさんの部屋は、「いかにも予備校生」といった感じの、そう、勉強部屋。部屋の中心に大きな勉強机がデーンと置かれている。その脇にこれまたかなり大きな和風のタンスが置かれていて、その上に化粧品やヘアケア用品が置かれていた。勉強だけじゃ確かに息が詰まる。息抜きにおしゃれを楽しもうじゃないか!
さて、、シロキさんの部屋にあるようなテーブルがないため、マジマさんの部屋では、勉強机がテーブル代わりだった。これは私の部屋と一緒。私の部屋も机しかなかった。
薄皮饅頭を食べながら、いろんなことを話した。予備校であまり友達ができない事、授業がさっぱり面白くない事、などなど。フムフムと頷きながらフと例の?タンスの上の化粧品コーナーを見ると、おっ!新しい口紅💄が箱のまま置いてある。「マジマさん、口紅買ったの?」「うん、あそこの店で。」あそこの店、とは、下宿から歩いて5分くらい所にある化粧品屋さんだ。あそこで買ったのか。、、マジマさんが通っている予備校の周辺には、おしゃれなお店がたくさんあるのだが、マジマさんは、そのあたりにはあまり行かないようだった。予備校の授業が終わると大抵すぐに下宿に戻ってくる、といつか言ってたもんな。「どうですか、この口紅。」そう言って、マジマさんは、口紅を箱から取り出した。おお!真っ赤だ!真っ赤な口紅だ。「マジマさん、真っ赤じゃん!」「そうなんです、私、どうしても赤い口紅が欲しくて、買っちゃいました。どうですかねえ、、」私自身、真っ赤な口紅は一度もつけたことがない。なんだかドキドキする。マジマさんがこれを塗ると、どんな感じになるんだろう。じっくりマジマさんの顔を見た。塗ってみないとわからんなあ。ちょっと塗ってみてくれよー。そう思った矢先「○原さん、これ塗ってみませんか。」マジマさんから言われた。「は?私?」「うん、私も塗るから○原さんも塗ってみて(^^)」よくわからんが、いいよ!でも、饅頭食べてからにしよう。せっかく塗った口紅に饅頭のアンコがついたら悲しいじゃないか。てなわけで、饅頭を急いで頂いたあと、二人して真っ赤な口紅を塗る事になった。それにしても、見事な赤じゃ。出かける予定もないのに、二人して真っ赤な口紅を塗る。「おお!マジマさん、すごく似合うじゃない!」「本当?嬉しい!○原さんも似合いますよ。貸しますから、大学に行く時塗ってって下さい。」「ありがとう!それにしても、マジマさん、まじで赤い口紅似合うよ」「いやいや○原さんこそ似合います」しばらく互いに激しく褒め合っていた。