少し偏った読書日記

エッセーや軽い読み物、SFやファンタジーなどの海外もの、科学系教養書など、少し趣味の偏った読書日記です。

ロング・グッドバイ

2019-05-03 19:54:38 | 読書ブログ
ロング・グッドバイ(レイモンド・チャンドラー/早川書房)

村上春樹訳のチャンドラー第1弾。30年以上前の学生時代に、ハードボイルドに関心を持った時期があり、チャンドラーもある程度は読んだはず、と思っていたが、古い在庫を確認すると、メジャーでない作品を1冊読んでいただけだった。当時は、ハメットみたいなのがかっこいいと思っていたのかもしれない。

村上春樹が大いに影響を受けた、というのがよくわかる作品であり、フィリップ・マーロウの円熟期。気の効いた表現や比喩が頻繁に出て来て読者を飽きさせない。主人公の推理は一切語られず、ただ行動を通して事件の核心に近づいていく。その手練がこれだけ見事だと、ハードボイルドと称する他の作品が、模倣にしかみえない。もちろん、模倣がすべて駄作というわけではないが。