不完全性定理とはなにか<完全版>(竹内薫/BLUE BACKS)
竹内薫氏が不完全性定理について解説したブルー・バックス。
2013年に同じタイトルで出版されたものを修正し、完全版としたもの。内容は、ゲーデルの不完全性定理と、それと同等の意味を持つチューリングの停止問題について、その証明を要約したもの。読者の見通しをよくするため、論理の道筋をいくつかのステップに分けて説明するなど、さまざまな工夫をしている。また、別の理論に基づく簡潔な証明も紹介している。
しかし、そのためにこれまでより理解が進んだ、とは思えない。著者がいうように、完全な理解のためには、より詳しい本を精読するしかないのだろう。個人的には、不完全性定理については次のことを承知していれば十分だと思っている。
1 特定の形式体系においては決定不能な命題が存在する。
2 その証明は一種の対角線論法である。
3 不完全性定理は、確実に正しいことなど何もないという意味ではない。
すでに何冊か類書を読んでいるが、あえてこの本を読もうと思ったのは、「数学宇宙仮説」について言及した部分があると知ったから。
この宇宙そのものが一種のコンピュータ、あるいはシミュレーションではないか、という考えがあるが、さらに進んで、宇宙は数学そのものだ、という議論もある。
著者はブライアン・グリーンの『隠れていた宇宙』を引用しつつ、宇宙のシミュレーションと不完全性定理の関係について私見を述べている。(考察というよりは感想レベル)
私は既読の『隠れていた宇宙』の第10章と第11章を読み返した。インフレーション多宇宙、ブレーン多宇宙、ランドスケープ多宇宙などさまざまな多宇宙の先に、存在する可能性のある宇宙はすべて実在する、という究極の多宇宙が示されており、その中で、不完全性定理との関係も記述されていた。(10年以上前に読んだが、よく理解できないまま忘れていた。)
今回の教訓。
十分に理解できない本は、時に再読する必要がある。
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