明智恭介の奔走(今村昌弘/東京創元社)
この作者は『屍人荘の殺人』シリーズで有名な方だが、私は未読。まずは、短編集から試してみることにした。
主人公は『屍人荘の殺人』に登場するらしい明智恭介。それ以前の活躍を描く、という趣向のようだ。
主人公は探偵にあこがれる大学生で、探偵事務所でバイトしたり、探偵愛好会会長の名刺を配り歩いている。そのような中で出会った5つの事件を描いており、犯罪に該当する事件がないわけではないが、どちらかといえば日常の謎。探偵としての修業時代、という感じか。
短編集としては少し謎が複雑かなと思ったが、全体としては軽くすいすいと読むことができ、期待どおりだった。
五編のうち1作は、他作品と少し風合いが異なるが、読んでみると、かつて若竹七海氏が提供したリドル・ストーリーへの回答になっていることに気づいた。(これを読んですぐに事情が分かる人にとっては、ネタバレかもしれません。すみません。)
第一弾、とあるから、このシリーズの続編は読んでみたい。が、『屍人荘の殺人』のほうは、私の偏った好み(ホラーは読まない、悲惨な話は嫌い)には、あまり合っていないような気がする。
余談だが、今回は5週前に紹介した『処刑台広場の女』の続編である『モルグ館の客人』(マーティン・エドワーズ/ハヤカワ・ミステリ文庫)を紹介する予定だった。
前作と同様、若くて美人で金持ちでミステリアスな女性を主人公とするサスペンス・スリラーとして、十分に楽しめる作品。
しかし、ある事情で、この作品を取り上げようとすれば、巻末に掲載された「手がかり探し」に言及せざるを得ず、成り行き上、どうしても深刻なネタバレを避けることができない。
ということで、読了の報告にとどめておきたい。あしからず。