タイタン・ノワール(ニック・ハーカウェイ/早川文庫)
この作者の作品は、2022年7月に紹介した『エンジェルメイカー』以来。
人間の体を若返らせる薬が発明された近未来。いったん若返り、その後に再成長するため、薬を投与された人間は巨大化し、タイタンと呼ばれる。(当然ながら、その恩恵を受けた人間は、大富豪とその縁者数千人に限られる・・・)
主人公は、そのような世界で、タイタンが関わる事件の後始末をする私立探偵で、警察のコンサルタントという立場。
冒頭に殺人事件が発生し、その真相を究明するという、この作者にしては非常に分かりやすい筋立て。
SF的な設定を除けばハードボイルド仕立ての探偵ものといえなくもないが、若返りの技術にも複雑な仕組みがあり、それが事件の真相と密接に結びついている。やはり本格的なSF作品、というべきか。
感想を少し。
タイタンたちの傍若無人なふるまいは、米国の大富豪を連想させる。
こんな設定で続編なんか書けるのか、と思うが、続編の予定があるらしい。
なお、前作の記事に書いたとおり、作者はジョン・ル・カレの息子だが、訳者あとがきによると、昨年、スマイリーものの新作を書いている、とのこと。詳細は不明だが、宿敵カーラの亡命後を描いているらしい。