少し偏った読書日記

エッセーや軽い読み物、SFやファンタジーなどの海外もの、科学系教養書など、少し趣味の偏った読書日記です。

タイタン・ノワール

2025-02-07 13:23:04 | 読書ブログ
タイタン・ノワール(ニック・ハーカウェイ/早川文庫)

この作者の作品は、2022年7月に紹介した『エンジェルメイカー』以来。


人間の体を若返らせる薬が発明された近未来。いったん若返り、その後に再成長するため、薬を投与された人間は巨大化し、タイタンと呼ばれる。(当然ながら、その恩恵を受けた人間は、大富豪とその縁者数千人に限られる・・・)

主人公は、そのような世界で、タイタンが関わる事件の後始末をする私立探偵で、警察のコンサルタントという立場。

冒頭に殺人事件が発生し、その真相を究明するという、この作者にしては非常に分かりやすい筋立て。

SF的な設定を除けばハードボイルド仕立ての探偵ものといえなくもないが、若返りの技術にも複雑な仕組みがあり、それが事件の真相と密接に結びついている。やはり本格的なSF作品、というべきか。

感想を少し。

タイタンたちの傍若無人なふるまいは、米国の大富豪を連想させる。

こんな設定で続編なんか書けるのか、と思うが、続編の予定があるらしい。

なお、前作の記事に書いたとおり、作者はジョン・ル・カレの息子だが、訳者あとがきによると、昨年、スマイリーものの新作を書いている、とのこと。詳細は不明だが、宿敵カーラの亡命後を描いているらしい。