ショコラティエの勲章(上田早夕里/ハルキ文庫)
先月に紹介した『破滅の王』の作者の、別の作品。
老舗の和菓子店の神戸支店で働く主人公の、一人称で語られる物語だが、実質的な主役は近所のショコラトリーのシェフ。
不思議な万引き事件。ガレット・デ・ロアに埋め込まれたフェーブの謎。シェフのデザイン盗用疑惑。主人公の周辺で起こる不思議な出来事の真相を、シェフが解明していく、という形は、近藤史恵の「ビストロ・パ・マル」シリーズに似てなくもない。
が、後半では事件の謎解きというよりは、シェフの人となり、ショコラティエとしての生き方に焦点が合わされ、職人としてのストイックさが描かれる。食を題材としたミステリーというよりは、職業小説の要素が強い。
デビュー作がSFで、『破滅の王』のような作品を書く人の作品とは思えない、意外さと軽さがよい感触だったので、紹介してみた。ほかにもフランス菓子店やイタリア料理店を舞台とする作品を書いており、それも面白そうだ。
しかし、本来、SFでデビューしたこの人のSFを、まだ読んでいない。SFファンを自称する身としては、そちらを先に読むべきかもしれない。
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