久遠の島(乾石智子/東京創元社)
興味ある作家を見つけて、文庫で追いかけているうちに、新しい単行本が出たのに、文庫ではなかなかでない、という状況に陥る。で、図書館で単行本を見つけて、以降、図書館で読む。
というパターンを、何度か経験したが、この作家についても、そういう事態に至った。まあ、図書館が入荷してくれる限り、ありがたい話なのだが。
「オーリエラントの魔導士」シリーズの、新しい一冊。物語の冒頭で、魔導士たちが魔法で作り上げた、世界中の本が閲覧できる「久遠の島」が、海中に沈む。その少し前に島を離れた兄と、沈む島からかろうじて逃れた弟、同じく生き延びた兄弟の幼馴染の少女。3人の生き残りの、その後の行く末を中心に物語は進んでいく。
オーリエラントの魔導士シリーズには、しばしば年表が示されているが、この作品は、作者のデビュー作である『夜の写本師』の時代から見れば、千年以上の昔。そして、『夜の写本師』とのつながりが極めて明確に示された作品。
この作品は、ファンタジーの王道である中世的世界における、本の物語だ。もうひとつの大きなテーマは、これから読む人のために伏せておきたい。
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