まとめて買う方が安いため、息子のオムツは箱買いする。
その箱の上面にはこんな言葉が書かれている。
「注意!カッターナイフ 投げないでください」
…思わず「なんじゃそりゃ!?」とツッコミを入れたくなるような文句。
奇想天外なドラマの最後に、「このドラマはフィクションです」というテロップが入るくらいの違和感がある。
当然、「投げないよ」と笑って箱を開けるのが常だけど。
カッターの刃が出てる出てない、人に向ける向けないを問わないなら、絶対投げないとは断言できない自分がいる。
腹が立って、思わず何かを投げたりとか。
誰しも、抑えられない激情があって、コントロールできない衝動があったりする。
【四苦八苦】という言葉がある。
日常会話でも使うけど、もともとは仏教の言葉で、合わせて8つの苦しみの総称。
その中に、【五蘊盛苦(ごうんじょうく)】という苦しみがある。
これは、人が心と身体を持つがゆえに生じる苦しみのこと。
そして、心と身体が思い通りにならない苦しみでもある。
思わず動いてしまったことなら、誰にでもあるだろう。
結果のことまで考えず、身体が勝手に動いてる。
そこに激情と衝動が加わったら。
物を投げたいわけではないけれど、投げずにはいられない。
投げてはいけないと心が止めても、身体が勝手に動き出す。
その激情と衝動が、人に向かうか向かわないかは、人間性の良し悪しだけでは決められない。
常に人を傷つけようと考えている人だけが、人を傷つけているわけではないから。
思わず手を振り上げた瞬間があったとして。
そのとき、その人が、一体どんな状況にあったのかという「縁」次第でもあるということ。
だから、全てを他人事に聞き流すのではなくて、まずは他でもない自分自身が、心に反して身体が動く人間であるということを自覚するのが一番大事。
仏教の苦しみとは、思い通りにならないものを思い通りにしようとするときに生じるもの。
五蘊盛苦という苦の存在に気付かないまま、思い通りにならない心身を思い通りにできると考えながら生きるのは、本当はとても怖いことのように思えた。
きっと私は、「カッターナイフを投げないで」という文言を見るたびに笑って済ますことで、今どれだけ平穏な日常を過ごしているのかということを、再確認しているのかもしれない。
再確認できるうちは、決して人を傷つけることはないと信じて…それこそが五蘊盛苦という苦の根本にある「我が身を思い通りにしよう」という意識であると自覚しつつ、けれど思わずにはいられない自分が、ここにいる。
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