とにかく今回のフランスにはお友達がたくさん!
時々ライブに協力くださるマメ山田さんも、パリの少し北側にある「GENNEVILLIER」という町の「T2G DE GENNEVILLIER」という劇場で「(作・演出)タニノクロウ」さんのお芝居「Avidya – L’Auberge de l’obscurité」(地獄谷温泉「無明ノ宿」)(AVIDYAは元はサンスクリット語のの仏教用語だそうで、数えられない鎖のように続く輪という事ですから輪廻ということかなあ、、、)に出演されたので見てきました。
これの面白かったこと!そして深かったこと!
タニノクロウさんを私は今まで知りませんでしたが相当の脚本家でらっしゃいます。仏教などにも詳しく、今、東洋思想や日本が大ブームなフランスの知識層の心をノックアウトしたのも分かります。だってこのパンフレット見てくださいよ。
「lE MONDE」とかが協賛で入っているのですよ!
そしてその内容も素晴らしく500人~800人くらい入りそうな劇場が満席!5日も上映するのにですよ!
お話は、小人症のお父さんと人形芝居をして旅している普通に背の高い息子さんの二人が、ある東北のひなびた温泉宿を訪ねるところから始まります。
お父さんはひょうひょうとしていて、息子は暗い瞳をしています。息子は、自分が小人症の遺伝子を持っていることを恐れ、結婚して子供をもうけることができないでいます。
二人はこの宿から招待されて芝居をしに来ましたが、当主はおらず、たまに掃除に来るおばあさん「TAKI」と、無人の宿でも何がしかの用をしている三助がいるだけ。
誰が二人を招いたか定かでなく、二人は帰ろうとしますが、もうバスもなく泊まる事に。そうすると唯一の湯治客である盲目の「matsuo」と、冬支度に入る前の温泉街から流れてきた芸者たちとともになります。
何とか視力を取り戻すために湯治を続けるという客の「MATSUO」は「目がもし見えなくても 心眼が開くといいんですけどね」といいます。でもその客に小人症の父は「心の目を開いて何を見るんだい?」と問いかけます。
これがマメさんの役。いきなり深いなあと思いました。
実は深い仏教問答を、いつものぶっきらぼうな淡々とした物言いで進めるマメさんはフランス人好みだろうと、私は思いました。
みんなマメさんを最初見たときビックリします。次に大好きになります。でも「小さいね」とか「小人症ですか」と問える人はまずいないと思います。
でもこの脚本家のタニノクロウさんは、その問いかけを正直にマメさんにして、そういう人生をどう受け入れたのか、きっと話ながらこの珠玉の脚本を書き上げたのではないでしょうか。
この芝居はマメさんでなくては演じられないマメさんありきの芝居です。他の役者では無理です。でも、この脚本を書こうとするいうタニノクロウさんを受け入れ、この役を演じたマメさんの人生に対する態度を、私は本当に尊敬しました。
二人とも勇気がある。そして正直です。だから、観衆の目は釘づけにされてしまうのです。
本物しか認めない厳しいフランスの観衆を、この芝居は見事に釘づけにしていました。それを見る事ができて、私は本当に幸せでした。
この脚本のテーマは、つまり人生をそのまま自然に受け入れ、愛する態度への示唆にあるのだと思います。小人症の父も問題を抱えていますが、父を受け入れられない息子も問題を抱えています。
少し足りない感じの三助も、性欲と、それを抑制するための知性や教育の欠如という問題を抱えています。「matsuo」は、盲目の他に何よりも己の運命を受け入れられない、克服するために湯治して人生と戦おうとする、戦ってしまうという、そういう問題を抱えています。つまり、いわゆる定年を理解しない訳です。そう言う彼の心の狭さは、三助と芸者のセックスの喘ぎ声を聞いてから嘔吐し続ける態度に示唆されます。
人生への拒絶が嘔吐となって表れるのは、サルトルの嘔吐という小説を思わせ、これはフランス人に受けるべくして作られた芝居だ、と舌を巻かざるを得ませんでした。
でも、その「できすぎた脚本が嫌味なく心にしみるのは、マメさんをはじめとした、素晴らしい俳優の皆さんの、淡々とした抑制のきいた芝居ゆえ」だと思いました。
三助さんはとても分かりやすいステロタイプなんですけどね。その芝居もこの深い脚本を飲み込みやすくかみ砕いてくれます。
これ以上は言わないでおきますね。きっと皆さんが日本で日本語で見るチャンスもあると思うので、、日本語タイトルはわかり次第書き直すのでお待ちください、
私は今、フランス語のパンフレットしか参照していないので原題をうまく訳せないのねごめんね。
でも、とにか素晴らしい芝居でした。
素晴らしい作品を見せてくれてありがとうございます。
マメさん、みなさんお疲れ様!
皆さん、ぜひこのお芝居が日本で上映されたらご覧いただけたらと思います。
あ、ちなみに皆さんに差し入れして喜んでいただいたのは、サンジェルマンのイタリアン「la Bufalia」のもの。
とても美味しいので、facebookで「LA BIFALIA paris gastronomia Italiana original」 で検索して、いらしてくださいる面白いおじさまと、息子さんが経営されていて、とても良いお店です!