雪嵐 小桧山博(こひやま はく)著
戦後の昭和23年、道東の山奥に住む小学5年のぼくは
学校から帰宅後すぐに家畜の餌やり、夕飯の支度と忙しい。
ぼくは生まれつきのひどい斜視で、学校でも苛められている。
村に越してきた朝鮮人の一家の同学年の時夫も同じだ。
近所の遊び仲間は、2年下の公次と1年上の由加。時夫も
誘いたいが周りが煩い。ぼくは由加に淡い気持ちを抱いている。
家族は農業の両親と出稼ぎの兄2人、兄嫁と姉と6歳の妹。
春に農協から借りた種で野菜を作り、秋の収穫で返す。
普段の生活費は、兄たちの出稼ぎでやり繰りしているが、年々
の借金は増えても、なかなか減らない。夏にはヒョウが降って
畑の収穫が減り、冬は大雪で仕事が減る。その上に兄の怪我と
父が入院をして働けず、一家は更に借金を強いられ・・・
苛めるのは一年上の杉山和也。ぼくの家は和也の父から借金
をしていて逆らえない。杉山は他家にも金を貸す村の実力者だ。
学校は勉強より農作業優先で、ぼくは農作業の繁忙期は休む事
が多い。遊びで前歯をおり、指先も削られたせいで村祭りの
相撲での小遣いも稼げなくなる。思春期の入り口にいる彼らは
家畜の交尾に性を学び、動物のや間引きに命を学ぶ。
借金の返済の遅れを女たちが体で償う、という昔ながらの因習も
まだ残っている世界。貧しいものはどこまでも貧しくなる一方…。
最後に兄の持つ馬の働きで、少しだけ日頃の虐げられた気持ちが
晴れる場面に、共感を覚えました。