歌庭 -utaniwa-

“ハナウタのように:ささやかで、もっと身近な・気楽な庭を。” ~『野口造園』の、徒然日記。

春の旅2:地中美術館

2010年03月28日 | 旅録 -travelogue-
前回:(春の旅1)で うどんを食べて、
チャージ完了。


いざ、「地中美術館」へ。


 *


地中美術館とは、

『財団法人直島福武美術館財団により運営されるこの美術館』で、
『瀬戸内海に浮かぶ島、直島の南側に位置し、
 クロード・モネ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルの作品が
 安藤忠雄設計の建物に永久設置されています。』
(※『』内:地中美術館HP:http://www.chichu.jp/j/concept/より引用。)

2004年に完成。
山の中にあります。

やっと来ました。




結論を先に言ってしまうと



「想像以上に良かった!」
です。


まず、
「チケットセンター」という受付的な“はなれ”から
入り口ゲートまで、そう短くない距離なんですが、

そこには
「地中の庭」という、

“モネの愛した植物を配した庭園”が、設えてあるのです。
アプローチとして。

これが、まず なにより、
素晴らしく、良かった。
正確に言うと、大変興味深かった。



むしろ、時間がある限りここに長居して、色々具(つぶさ)に観察したかったなあ。

職業病ですが。


   (ひなげし)


という気持ちもありつつ。


美術館にエンター。

エンターする直前のアプローチ植栽に、
桜餅の甘い香りが漂っていました。

オオシマザクラが一本、咲いていたから。
桜餅の葉っぱに使われる桜です。

一本だけでも、こんなに香るんだ!って、びっくりしました。




さて。

ここでは
建築も作品も 一切 写真撮影禁止
なのです。
音響や雰囲気などの関係上。

チケットセンターで説明を受けた後、カメラを没収されます。

なので、

写真で伝えられないのは残念。
実際に行った人だけのお楽しみということです。
HPを見るなりして、なんとなく感じをご覧下さい。


とにかく、何が良いって、
「実際行って見るしかない!」
としか、結局言いようが無いのですが、
そういう口コミ、戦略的なものもあるんでしょう。

成功していると思います。


あのスケール感は、確かに

実際 足を踏み入れて、

ゆっくり 時間を過ごして、
ダイレクトに体感してみないと、その良さはわからないと思われます。

「百聞は一見に如かず。」
いくら言葉を尽くしても、伝えきれない。

ちなみにそれは、
建築や庭については、いつもいつも、同じことが言えます。

音楽のライブだったり、芝居だったり、パフォーマンスだったり、
映画だったり
アートについても、すっかり同じことが言えます。


生で体感しないと、おそらく1%もその良さが伝わらない という、
「生」の強さ。
フィジカルな強さ。
言葉を超えた何かがある、強さ。
それがあるものは、成功している。


昨今のデジタルメディアが跋扈する文明社会では もどかしいけれど、

”生の現物に、生で触れること それ以外は無意味に等しい”

という強さは、
年月を経ても絶対的に揺るがないであろう、絶対的な強さ。

この美術館には、それがあったと思います。


こと細かく挙げると切りがないけれど、

とりわけ強烈だったのは、


白い石が敷き詰められた 青天井の空間。


これ、

あたまの中がぐるんと廻った、、というか、

平衡感覚が、「ぐらっ、」と、揺らぐ感じが、ありました。

例えるなら:
まずずんと重い”溜め”があって、鈍いめまいがして、それからぐいっ!と、
力づくでむんずと後ろに引きずり倒されて、
そしたら
抽象的な青の青い空という色が 10倍の重力並みに無音で落っこちて来た

かのような、
すごく重たーい、「ぐらっ、」です。

見ていると、ぼー・・・・っと、惚(ほう)けてくるんです。


要するに、
凄かった。

なにが凄くてそう感じるのか
なにが作用してそう感じるのか
そのトリックがよくわからないことも、凄かったのでした。

傾いたマッシヴな白い壁の迫力なのか、、、、
包まれた井戸的空間の重力感なのか、、、


ちなみにこれ、
「ウォルター・デ・マリア」の作品だと思っていたのですが、
その人は 黒い球体の作品を作った方なので、
もしかしたら、そうではないみたいで。いったい誰の作品だろう。。。





タレルも、
わかっちゃいたけど、
やっぱり、
良かった。


タレルの部屋、ちょっと並んで「待ち」状態になっていたので、
「えー、並んでる。ここパスしようか。」と呟いていたおばさんに

「いや、ここは絶対に見た方がいいと思います。」
と強く主張しました。

わざわざここまで来ることができたのなら、あえてスルーとか、勿体ない!
おばちゃんそこ頑張ろうよ!今更何を急ぐの!

待機の人用には ちゃんと、それ相応に、ゆっくり過ごすべくある
別の”タレル部屋”があるので。

直島に行く機会がある方は、ちょっと並んでても、(実際ちょっとの間なので、)
ぜひ全部、しっかり体感すること。強くおすすめします。


いかにもお金がかかりそうな
「地中カフェ」も

ぜひ行くべし!何も買わずとも!

「いちおう見とくか」って、行ってみて正解。



こんな風景が、どーーん!と待ち構えています。

外の 見晴らしのよいテラス的空間があるのです。
(ここは外なのでオッケーと思って、ケータイのカメラで撮った。まずいかしら。)


いやあ、良かった。隅から隅まで。

ちなみにトイレもちゃんとチェック。

真っ黒でした。




ここはすべて、
自然の光でアートを見せる場所です。


作品も、もちろん、建築も。
風景も、とりこんで。

時間のうつろいとともに、その見え方ももちろん変わっていきます。

天候によっても変わるし、
季節によっても変わるはず。


できれば せめて一日中、長居して、体感してみたい。



とにかくここでは、
時間も労力も何もかも、ケチっちゃだめ!

ってことが、わかりました。




安藤忠雄の建築は、昨今巨大化して来てから自分的には面白くなくて、
しばらく離れて居ました。

それだもんで、久しぶりの”タダオ”だったのですが、

かなり見直しました。(上から目線)

ここも、規模的には全く小さくはないけれど、
コンセプトがシンプルで秀逸だし、
ストイックに凝縮されている。

ここでは、
安藤の建築自体も、他の3人のアーティストと同列に、一作品として掲げられています。
納得です。

久しぶりに、ガツンとやられた感のある、
強烈な建築的ショック。


ちなみに私が好きな(=衝撃を受けた)タダオ建築は、

大阪・茨木にある「光の教会」(光の教会こと茨木春日丘教会HP

淡路島にある「本福寺・水御堂」です。

じわじわと、なんとなく良さが伝わって来る、、、
っていう生ぬるさも へったくれもなく

ガツン!と衝撃を受ける、
強烈な力のある作品でした。


そういえば、
このどちらも、自然光が生かされている建築なんですよね。

一見無機質なコンクリート打ちっ放しの建築と、
ストイックな幾何学と。


うーん。、、、やはり良い。

安藤忠雄という建築家が 自分にとって大きな転換点であって
多分に影響を受けているという事実。これは、
関連本をほぼ全部手放してしまって、いったん離れたとしても、
やはり、変わらないことなんですよね。

多分、何か、根本的なところで、つながっている糸がある。


これを機に、
もう一回、振り返ってみようかしら。


彼の何に、ピンと来て、劇しく突き動かされたんだったか。







ということで、「地中美術館」鑑賞終了。。。




重いショックで くらくらと、
頭もぼ~~っと ほうけた状態のところに、

岡山在住の友人U氏が、突然の登場!
友情出演です。


私はぼ~~っとしてたので、
「キャー!!久しぶり-!!」って感じでは全くなく、
「あー、」みたいな、かなりそっけない感じだったようです。

ぼーーっとしてたの。ごめんね。


そう、
この旅が決まった時、
「もしかして、直島でランデブーできない?」って提案したのでした。
学生時代初期からの、10年来の友人です。

そしたら、
まさかの、自転車で強行駆けつけ!片道二時間;

全くもって、お疲れ様、というか、
「え、ほんとにチャリで?」って、
いつまでもアンビリーバボーでした。

なおさらぼーぜん。




そんなわけで
何年ぶりだか(3年ぶり?)の呆然的再会を果たして、

ぼーっとしたまま
次の目的地:「直島銭湯「I♡湯」」へ、向かうのです。


彼のチャリを、車の頭にくくりつけ。



 (・・・続く >>>)




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