参議院選挙は、最終版を向かえています。北海道の選挙区では、自民党候補は選挙公報に記載した内容は憲法、消費税率引き上げ、原発再稼動、歴史問題には全く触れていません。かすかにTPPに触れて、譲れない課題にはがんばります程度の触れ方をしています。その他は、景気対策、アベノミックスに触れるのみです。自民党が公約に掲げている憲法改正、TPP参加、原発再稼動などは選挙民から見たら自民党の主張は分からないまま選挙が進行しています。
選挙戦が、盛り上がらないのと、自民党政権の争点隠しにより、選挙への関心は高まることなく、淡々と進んでいます。このような状況で3日間が過ぎれば、間違いなく投票率は50%を割り、しかも、無党派層という集団が今回の参議院選挙への権利行使がされないで、参議院の議席が決まります。これでよいのでしょうか。仙台市で棄権は危険!との投票行動を呼びかける訴え文書が個人名で出されたとのことですが、民主主義、代議員制度にとっても危機的な状況が進行しています。
この社説でも言うように、教育制度、義務教育は中長期的には、国のあらゆる問題に影響を与える課題です。しかし、選挙戦では全く争点になっていません。国の将来像、どうなって欲しいかに直接関係する課題です。安倍、自民党政権は憲法改悪、歴史認識の変更、集団的自衛権などをめぐり、かつての、富国強兵、天皇主権制度の下での義務教育に戻そうと狙っています。その中でも、中国アジア侵略戦争の侵略否定、歴史認識の改ざんは中心的な課題にしようとしています。文部科学省を中心とした教科書検定への関与、政治による教育分野への介入を強化しようとしています。その次には、自衛隊の国防軍化、戦争の出来る軍隊作りと、徴兵制につながる教育制度作りです。
憲法改悪、集団的自衛権の法的容認(解釈改憲)、自衛隊の国防軍化、反動的な教育制度作りは一体の動きです。これらが、全く、議論されず、選挙民の判断が反映しないままに、経済対策への評価のみで自民党政権圧勝となり、白紙委任状的に教育制度への政治介入、歴史認識の改ざんが進むことは容認することができません。
<社説>参議院選挙と教育問題
自民党が政権に復帰して顕著な変化を遂げた一つが教育政策だろう。
安倍晋三首相の復古的な教育・歴史観、競争原理の重視に裏づけられているのは明らかだ。
選挙戦が最終盤を迎える中で、その是非をめぐる論戦は、首相自ら成果を誇る経済政策(アベノミクス)の前にすっかり鳴りを潜めている。有権者にとって、子どもの教育は最大の関心事である。与野党ともに教育問題を真っ正面から争点に据え、論戦を挑まなければならない。政権交代後、教育をめぐる様相は一変した。首相の肝いりで発足した政府の教育再生実行会議の提言を見ればよく分かる。教育長を首長から任免される地位に、英語を小学校の正式教科とし、道徳は検定教科書を使う「教科」へ。矢継ぎ早の提言だ。
下村博文文部科学相は土曜授業の復活に加え、全国学力テストの市町村別、学校別の成績公表を考えるべきだと、私論を振りかざす。成績の公表は学校の序列化につながる。断じて容認できない。今選挙で自民党は「世界で勝てる人材の育成」を公約に掲げている。世界で勝てる人材とは一体、何を意味するのか。競争一辺倒の教育によって、子どもたちの未来が開けるとは思えない。競争を教育の目的にしてはならない。
さらに懸念されるのは、教科書検定・教科書採択のあり方の見直しや、規範意識、自国の歴史・文化の尊重といった復古的な施策を公約に盛り込んでいることだ。今後、国による単一の歴史観や価値観の押しつけに道を開くことになる。危惧を抱かざるを得ない。
野党に転落した民主党は、政権時代に推進した高校授業料の無償化や少人数学級の実現を誇示する一方で、今後は給付型奨学金の創設に力を入れると主張している。公約ではこれをどう肉付けしているのか、極めてあいまいだ。まずは財源を含む具体的道筋を示すのが筋だ。先進諸国の中で最低水準にある教育予算のあり方にも切り込まなくては、実現などおぼつかない。あまりに無責任な対応だ。他の政党も、教育問題を公約に入れてはいるものの、争点化するには盛り上がりを欠く。
いま教育現場には、深刻な課題が山積している。首相が提唱する経済政策が一定の成果を挙げたにしても、学力格差の拡大や貧困の連鎖を断ち切ることはできない。投開票まであと4日となる中で、各党には教育についての理念を語り尽くしてもらいたい。