小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

朝日・読売はなぜNTTの「詐欺」商法を見抜けなかったのか

2008-07-17 18:33:28 | Weblog
 昨夜(7月15日)NHKが午後7時のニュースで、公取委がNTTに広告不当表示の排除命令を出したことを報じた。実は私は昨年4月ごろ別件でやはりNTTの「詐欺」商法を総務省に告発したが、まったく無視された。NTTと総務省がつるんでいることがこの事実で明白になった。が、そのころには私はまだブログを書いていなかったのでブログでの告発は考えもしなかった。
 私がブログを書き始めたのは今年4月末。それまでNTTに対して何度も「総務省にリコールの届けをして、不当に徴収してきた通話料金を加入者に返済すべきだ」と申し上げてきたが、常に「検討中です」という返答しか返ってこなかった。このとき私が総務省ではなく公取委に告発していればその後の状況は多少変わっていたかもしれない。
 公取委ではなく私が朝日の社会部(正式には社会グループ)のMさん(20代半ばと思われる女性記者)にこの問題を情報提供したのは今年1月28日の午後9時過ぎだった。そのときMさんは「NTTの広報に取材してみます」と言われたので、翌29日FAXを送り、「広報に取材する前に一般の利用者を装って116センターに電話して自分の耳でNTTの説明を確認してください」と申し上げた。が、MさんはNTT東日本のホームページを調べ、「問題なし」と勝手に判断し、大スクープを逃してしまった。その問題は後で詳しく触れるが、この時点で今回の公取委の摘発を「予言」するような示唆をしている。その箇所を引用する。

 その他にもNTTのやり方にはアンフェアなことがまだあります。たとえば「光フレッツのほうがADSLより安い」とウソの宣伝をしたり(私が利用しているADSL+IP電話が一番安い組み合わせです)、もうとっくに償却が済んでいて後はメンテナンスコストしかかからないはずのメタル回線の基本料金を1785円もの高額を取りながら(なおNTTは「ご注文内容のお知らせ」と言う事実上の加入契約書に基本料として税抜きの1700円という表示しかしておらず、これも法律違反です)電話利用者を無理やり光に切り替えさせるため、膨大な光回線網の建設コストを度外視した500円という格安の基本料を設定するなど(なおインターネットとの契約とセットになっており、電話だけ光を使い、インターネットはADSLを利用するという選択はNTTは受けてくれません)利用者無視の極めてアンフェアな事業を行っています(私は独占禁止法に触れるのではないかという疑問を抱いています)。

 私がNTTの「光フレッツ」のからくりの一端をようやくつかんだのは6月20日過ぎだった。 
 私だけでなく、ほとんどの方々が「光電話」は全国に張り巡らされた「光ファイバー網」を伝わって電話がかけられる仕組みになっていると思い込んでいる。現在はNTT東日本の公式ホームページのトップページから「ひかり電話」をクリックすると小さな字で「フレッツ光を利用したおトクな光IP電話サービス」と書いてある。で私は116センターに電話して「フレッツ光を利用した光IP電話は一般のIP電話に比べて何がトクなのか」と聞いた。当然だが116センターには答えられなかった。「お客様相談センターに聞いてくれ」と言うことなので、そちらに電話して聞いたが、「フレッツ光と同時に光電話を申し込んだ場合工事費が無料になる」ということだった。だが、NTTは「フレッツ光に申し込むと電話料金が基本料500円、通話料が全国どこでも3分8円(いずれも税別)になると電話代の安さを必死にPRしてきたはずだ。だからインターネット環境だけを光にする人はまずいない。それをあえて「フレッツ光と同時に申し込むと工事費が無料」という通常のビジネスと考えたら当たり前すぎるほどのサービスをあたかも特別な好条件のような説明をして消費者を騙してきたのである。
いまの若い人は固定電話を持たず、携帯でインターネットに接続している人が圧倒的に多い。その若い人たちを取り込もうとしたのが、NTTを「詐欺」的商法に走らせた最大の原因である。だからNTTはあえて基本料500円などという無鉄砲な料金設定をし、当初は「ひかり電話」が実はIP電話にすぎないことをひた隠しにしてきたのである。
実はここまでは今日(7月16日)の午前中に書いた記事である。実は6月の末ごろ書いた記事がある。その記事より重大な問題に取り組むことになり、書きかけで放って置いたのがその記事である。このあとすでに6月に書いておいた記事を続ける。この記事は朝日のMさんに情報提供するために書いていたものである。実際7月1日、Mさんに次のようなFAXを私は送っている。
あなたに朝日新聞1面トップを間違いなく飾る記事を書かせたいと思ってFAXします。「社長賞なんか欲しくない」という気持ちはいつまでも持ち続けてください。でも「社長賞」に値する記事を書こうという気持ちはジャーナリストとして大切です。
いわゆる「スクープ」には二つの種類があります。(中略)もうひとつのケースは論理的思考力によって結論づけたことが、結果的にスクープとしての価値を持つ場合です。いまあなたに提供しようとしている情報がその類のものです。こうした類のスクープをものにするには「幼児のごとき素直な気持ちで、世の中のあらゆることに素朴な疑問を持つ」資質があるかどうかが問われます。
(中略)正直言って今の私は朝日から極めて危険視されている人間です。私が朝日の主張に手厳しい批判を加え、その批判を跳ね返す論理を朝日が展開できなかったからです。私の朝日批判はgooブログに書いていますから、赤子のような素直な気持ちで読んでみてください。私が朝日から危険視されていることを承知の上で私から学べるものは学ぼうという気持ちになられたら、冒頭で述べたように、間違いなく1面のトップを飾れる情報(もうとっくに減価償却が済んでいるはずのメタル回線を利用した電話の基本料が1700円で、いま膨大な設備投資をしている光回線を使ったひかり電話の基本料がなぜ500円なのという疑問を持てば自然にたどり着く結論です)を提供します。
これが朝日のMさんに7月1日に送ったFAXの一部である。この時点で私は公取委に先んじてNTTの「詐欺」的商法のからくりをすでにつかんでいた。残念だったのは私がMさんを買いかぶっていたこと、つまりMさんにはジャーナリストとしての感性が皆無だったことに私が気づかなかったことだ。わたしがMさんに期待を持たなかったら、少なくともこのブログで公取委に先んじてNTTの「詐欺」的商法のからくりを告発できていた。
では6月末に書いておいた記事をこの後に続けよう。これまで書いてきた記事との多少の違和感をお感じになると思うが、事情が事情だけにお許しを願いたい。
 
NTTが「フレッツ光」(「Bフレッツ」とも言っているが、中身は同じなので「フレッツ光」の名称を使う)の宣伝に躍起になっている。だが私が利用しているプロバイダーso―netが提供している12メガADSLサービスのほうがお勧めである。プロバイダー料金・回線使用料金・モデムのレンタル料金のすべてを合わせても総額2100円でインターネット使い放題なのだ。ただし12メガのADSLはNTTの電話基地局から最大4キロ以内(理想的には1.4キロ以内)でないと支障が生じる恐れがある。その場合は速度12メガを維持できず、かなり速度を落とす必要があるようだ。
さらに電話をIPにすれば、全国どこに掛けても3分8.5円だ。このIP電話の通話料金はプロバイダーによる差はないが、契約しているプロバイダー以外のプロバイダーのIP電話を利用することはできない。
が、今のところ、私が調べた限りso-netの12メガADSLとIP電話(so-netフォン)の組み合わせがインターネット環境および電話環境のベストな組み合わせである。
が、NTTやNTTの代理店が、私の住環境にも光回線を導入するので「フレッツ光」に加入しないかと、かなり強引にセールスしてきた時期があった(今でも代理店から時々勧誘の電話がある)。私のNTT番号は非公開にしているので、誰かが104で調べようとしても不可能である。なのにNTTの代理店から名指しで電話がかかってきて、しかも私の住環境に光回線が導入されたことまで知っているということは、NTTが、私が秘匿したはずの電話番号と住所などの個人情報を代理店に提供していることを意味する。NTTは顧客を「フレッツ光」に切り替えさせるため犯罪にまで手を染めているのだ。
それどころかもっとNTTが悪質なのは、とっくに減価償却が済んでいて、今かかっているのはわずかなメンテナンス・コストだけなのに(たぶん加入者一人当たり月額にして100円もかかっていないはず)、依然として従来のメタル回線利用者に対して1785円という暴利に等しい基本料を徴収している。いまではNTTは固定電話(メタル回線)の加入権料を取っていない。すでに設備投資を続ける必要がなくなったからだ。ということは基本料もメンテナンスにかかるコストだけにすべきではないのか。
さらに問題なのはひかり電話の料金体系である。すでに減価償却が終わっているメタル回線と違い、全国津々浦々に光ファイバー網を敷設するには膨大な費用がかかっている。それなのにひかり電話の料金は基本料が500円(税込み525円)、通話料にいたっては全国一律で3分8円(税込み8.4円)と、バカ安いのだ。ところが、NTTにひかり電話だけの加入を申し込むことはできない。インターネットとのセットでなければひかり電話を利用することはできないのだ。しかもインターネットをするために契約するプロバイダーは、NTTと契約した11社(NTT東日本の場合)の中から選ばなければならない。なぜNTTはプロバイダーを指名しなければいけないのか。契約していないプロバイダーからは不当に高い回線利用料金をキックバックさせることができないからだ。 
通常プロバイダー料金は、メタル回線を使う場合(ADSL)も光回線を使う場合も1000円前後である。ADSLの場合はそのプロバイダー料金の他にモデムのレンタル料、回線使用料などを含んだ料金になり、すでに書いたように基地局から近い場所でADSLをするにはso-netの12メガが一番安い。
なのにフレッツ光の場合、NTTは「基本料500円、ルーターレンタル料450円(最も安いケース)、通話料は3分8円と、電話代が従来のメタル回線を利用した電話に比べ格安になる(いずれも税抜き料金)」と宣伝している。その数字に実はごまかしがある。
そのごまかしがばれるのを防ぐため「インターネットはやらない。電話だけひかりにしたい」という希望は一切受け付けない。なぜなら電話だけ光回線を利用されたらNTTの「詐欺」商法がばれてしまうからだ。
実は「ひかり電話」とNTTが称している電話が、電話をかけた相手先まで光ファイバーを経由していると誤解されている方が大半である。それも無理はない。NTTやNTTの代理店のセールスマンが「ひかり電話の実態」をきちんと説明しないからだ。実際私の住環境にセールスに来たNTT職員に尋ねたことがある。
「従来の電話はかけた相手先との距離(厳密には自分の電話の基地局と相手の電話の基地局の間の距離)によって通話料金が違うのに、ひかり電話だとなぜ全国一律3分8円(税込み8.4円)でかけられるのか」
 この質問にまともに答えられる人は誰もいなかった。
 当然である。NTTがひかり電話の正体をひた隠しにしてきたからだ。だが、消費者の間から当然の疑問が噴出した。
とっくに償却が済んでいるメタル回線は基本料を1700円も取り、べらぼうな市外通話料金まで取っているのに、莫大な設備投資を続けているひかりにすると基本料は一気に500円に下がり、通話料も全国一律で3分8円でかけられるのか(すべて税抜き料金)。
そうした疑問が殺到したため、今はやむを得ず「ひかり電話」がIP電話であることを説明するようになった。つまりひかり電話というのは、自宅に光ファイバー(光回線)を引き込んでいる場合、電話をかけると自宅から管轄のNTT基地局までだけ光回線を利用し、その基地局から電話先の基地局までは光回線を経由せずインターネットで音声やFAX文書をデジタル信号で送り、相手先の電話を管轄する基地局からNTT回線(光もしくはメタル)で音声や文書を伝送する仕組みなのだ。電話をかけた相手が光ファイバーを引き込んでいるとは限らないから、確かなのは自宅から管轄のNTT基地局までは間違いなく光回線を使っているということだけだ。だから「ひかり電話」の実態はIP電話であり、それをあたかも相手先まで光ファイバーで音声やFAX文書を伝送しているかのような、顧客に間違いなく錯覚させるような宣伝をしているのだ。
しかもNTTは「ひかり電話の音声品質は固定電話相当」と言う実に紛らわしい表現の宣伝までしている。この「相当」という表現が実は「固定電話に比べ品質はやや劣るが、問題になるほどの劣化ではない」という意味で使われる表現であることを理解できる人は文章についてのよほどのプロである。おそらく成人日本人の90%以上は「固定電話相当」という表現と「固定電話並み」という表現の区別がつかないであろう。それほどNTTはずるがしこい会社なのである。
私が電話をIPにしようと考えたとき,プロバイダーにIP電話の音声は固定電話に比べてどのくらい音質が劣化するのか聞いたことがある。「最高の電波状況でかける携帯電話とほぼ同じです。だから固定電話に比べれば多少劣化しますが、支障が生じるほどではありません」ということだった。すでに述べたように「ひかり電話」はIP電話である。したがって「ひかり電話」の音声も「最高の電波状況でかける携帯電話とほぼ同じ」というのが正しい説明のはずだ。実際私もIP電話を利用しているが、私の声が相手に聞き取りにくいといった苦情は一度も受けたことがない。だからとくに「光ひかり電話は固定電話に比べて多少音質が劣化する」とまで正直に説明する必要はないと思うが、「固定電話相当」とまで表現すると騙しの宣伝になる。
さてNTTの「詐欺」的商法の解明をさらにしていくが、「ひかり電話」の基本料がなぜたったの500円で済むのに、すでに償却が済んでいるメタル電話の基本料を1700円も取るのかである。
NTTとフレッツ光の契約をしている11社すべてを調べても意味はないので私が契約しているプロバイダーso-netのケースで検証する。
So-netの場合プロバイダー料金は月額945円である。この金額はメタル回線を利用したADSLの場合も、フレッツ光の場合も同額である。光回線を利用する場合、特別な設備投資をする必要がないのだから、プロバイダー料が同額なのは当然である。違うのは回線利用料金で、これはかなり複雑である。同じADSLといっても私が契約している12Mと50Mでは相当な差がある。だからインターネット環境によってはADSLよりも100Mのフレッツ光のほうが安くなることもあるのだが、私がインターネット環境を光に替えると料金は2100円から一気に3938円に膨れ上がってしまう。その分は実はNTTの光回線利用料金なのだが、それをひかり電話の基本料に加算してしまうと当然ひかり電話の割安感が消滅してしまう。だからNTTはひかり電話の基本料を格安(というより光網敷設の建設費の減価償却費より大幅に割り引いた赤字料金)に設定して実際には基本料としてNTTが徴収すべき料金をプロバイダーに代理徴収させているのである。これを「詐欺」的商法と言わずして何と言えばいいのか。
私の住環境に光回線が導入されたときNTTは「ADSLより安い」と宣伝した。ある場所で説明会を開くというので、私が契約しているso-netとの契約書を持って出かけた。その書類を見てNTT職員は「えっ、こんなに安いADSLがあるの?」と唖然としていた。 
その後もかなりの期間NTTは「フレッツ光のインターネット環境のほうがADSLより安い」と宣伝していたが、いまはさすがにその宣伝はしなくなった。が、プロバイダーからNTTへの還流(本来ひかり電話の基本料として徴収すべき料金)については今でもひた隠しにしている。

ここまでが6月に書いておいた記事である。この情報をMさんが私から入手していれば、朝日の取材力でもっと詳細な、つまり公取委がつかんだNTTの隠し基本料金を公取委より早くスクープできたはずだ。
公取委は7月15日NTTに対し広告不当表示があったとして排除命令を出した。公取委によれば、「ひかり電話を使うためにはまず『フレッツ光』と呼ばれる同社の光ファイバー回線の通信利用料(月額2625~5460円)が必要で、さらに電話の基本利用料525円がかかる。一部の広告では、この回線利用料を記載せず、固定電話の基本利用料1680円(筆者注・固定電話の基本料は1785円のはずだが?)と525円だけを比較し『ひかり電話のほうが安い』などと表示した」(7月16日付朝日新聞朝刊1面の記事)
しかし公取委もつかんでいない極めて重大な「ひかり電話」の致命的な欠陥がまだある。ひかり電話では「ナビダイヤル(0570で始まる電話番号)」にはかけられないのだ。このナビダイヤルは実はNTTの商品ではなく市外電話専門の第3の電話会社NTTコミュニケーションズの商品でNTTの料金体系とはまったく別の通話料金が設定されている。たとえば新聞のテレビ欄には各放送局の視聴者センターの電話番号が記載されており、民放はすべて東京の市外局番03から始まる番号が記載されているが、NHKだけは0570-066-066というナビダイヤルになっている。しかもこのナビダイヤルは必ずしも全国同一通話料金でかけられるとは限らず、NHKの視聴者センターのナビダイヤルにかけた場合の通話料金は実は通常のNTT料金がかかる仕組みになっている。そしてNHKの視聴者センターは東京・渋谷の本局にではなく川崎市内に設置されているため、川崎市内からかけると180秒ごとに8.5円でかけられるが、東京からかけると90秒ごとに8.5円かかるのである(全国同一の通話料金のナビダイヤルを設定している会社もある。その場合は市外通話料金をその会社が負担している)。
このナビダイヤルへの通話が不可能という事実はNTTがひた隠しにしていて、公取委が調べた約4000種類のチラシや広告にもたぶん一切記載していない。インターネットで「ひかり電話」を検索するとほとんど誰も気がつかない「留意事項」の一覧表の中にナビダイヤルについて×が付いているのが、いちおう告知義務を果たした証拠としているようだ。

NTTのあくどさはそれだけではない。NTTは電電公社時代から「エリアプラス」というサービスを提供している。私は一時加入電話会社を日本テレコム(現ソフトバンクテレコム)にしていた時期があったが、ADSLを始めることになり加入電話会社をNTTに戻した。そのとき「エリアプラス」も申し込み、NTT東日本から平成19年2月17日発行の「ご注文内容のお知らせ」という正式な契約文書が送られてきた。その文書にエリアプラスの公的説明が記載されている。「エリアプラスは、月額定額料100円のお支払いにより隣接・20kmまでの通話を8.5円/3分でご利用いただけます」と明記されている。ところがこのサービスは電話をかけた相手先がNTTの加入者に限られているのだ。しかもそのことをNTTの116センターの誰も知らないのである。
私がエリアプラスというサービスに疑問を持ったのはNTTから届いた請求明細書を見たときだった。私が隣接市外地にかけた電話が、NTT東日本扱いで8.5円/3分の割合で請求されているケースと、NTTコミュニケーションズ扱いで市外料金が請求されているケースがあったのである。どうしてそうなったのか116センターの責任者も料金計算センターの責任者もわからず、結局NTTは3月12日、NTTコミュニケーションズ扱いにした隣接市外地への電話料金を全額私の銀行口座に振り込んできた。これでNTTのミスは解消されたと私は思ったのだが、また同じことが生じた。このときはさすがにNTTも必死に原因を調べ、結局エリアプラスを設計した責任者から電話があった。その責任者の指示に従ってNTT東日本のホームページから「エリアプラス」を検索し、エリアプラスのトップページから「ご利用上の注意」のページを開き、ようやくエリアプラスのサービスがNTT以外の電話会社に加入している相手への電話には適用されないことがわかったのである。そしてこのときはNTTはNTTコミュニケーションズからの請求額全額ではなく、エリアプラスが適用されたときの料金との差額を6月12日私の口座に振り込んできた。
この事件が契機となって私はIP電話に移行したのだが、NTTに対して「直ちに総務省にリコールを届け出て、NTTとエリアプラスの契約を結んだお客さんに損害額を弁済すべきだ」と強く主張し、総務省にも経緯をすべて話し善処するよう求めたが、いまだNTTはエリアプラスのリコールを届け出ず、総務省もNTTへの指導を行っていない。ここにも官民癒着薄汚い世界があったということだ。
この記事を書き終えたのは17日の午後6時過ぎである。この記事はワードで書いている。だから6月に書いておいた記事を間にはさんで書くことができたのである。これから用意しておいたgooブログの「新規投稿」ページに投稿し、投稿が「完了」したことを確認した後朝日と読売に通告する。公取委と総務省には明日連絡する。(了)




小林紀興の社会保障制度改革論

2008-07-03 14:51:09 | Weblog
税制改革について
 現在の、社会保障を支えるための財源はほぼ消費税率のアップによってまかなうという議論が中心になっています。私も消費税率のアップは避けられないとは考えています。
 ウィキペディアによれば、消費税導入は法人税を40%から30%に引き下げることによって生じる税収不足を補うため、という議論があったと書かれていますが、私の記憶では戦後のシャウプ税制によって過酷な税負担を強いられていた高額所得者の最高税率(所得税+住民税)を欧米並みに引き下げることが当時の自民党政権と財界が仕組んだ税制改革の目的だったと思います。ウィキペディアによれば所得税の最高税率(課税標準1800万円以上)は、86年まで70%だったのが、87年60%、89年50%、99年37%、07年40%と変遷をたどっています。ここで注目すべきは99年に37%に大幅減税が行われる2年前の97年には消費税率が5%に引き上げられていることです。この消費税率アップと所得税の大幅減税が同時ではなく2年間のギャップを自民党政府が置いたため、大きな社会的問題にはなりませんでした。
 問題は平成元年(88年)の消費税導入が、翌89年の所得税法改定(最高税率50%への引き下げ)と事実上パラレルに行われた税体系の抜本的改定だったということです。実際今でも私の記憶に鮮明に残っているのは自民党政府と財界がタッグを組んで、①高額所得者の税負担(所得税+住民税)が欧米先進国に比べて重過ぎる ②高額所得者に過酷な税負担を強いると彼らがやる気を失う、という主張を大々的に展開したことでした。
 政財界が一体となって主張した高額所得者への税負担軽減の二つの理由の中の①については当時私も異論はありませんでした。ただし②はまったくのウソです。ネットではいつごろ経済界でもてはやされたか調べることはできませんでしたが、ダグラス・マグレガーのXY理論が経営手法の本流になった時期があります。X理論とは「従業員はもともと働く意欲は持っていず、アメとムチで管理する必要があるという従来型経営手法」で、Y理論は「人間の欲望は5段階に分けられ①生きるための最低限の欲望②性欲③金銭欲④名誉欲、そして最高ランクの⑤が自己実現の欲望である」というものでした(Y理論の人間の欲望の5段階は⑤の「自己実現の欲望」を除き私の記憶で書きました。間違っていたらご指摘ください)。日本の経営者たちはこのマグレガーのXY理論をもてはやし、従業員に「給料や地位にこだわらず、自己実現のために働け」とハッパをかけていました。そのことをすっかり忘れた振りをして、「税金を安くしないとやる気を失う」と、いけしゃあしゃあと主張したのが当時の財界でした。
それはともかくシャウプ税制が高額所得者を狙い撃ちにした税体系を作った効果は確かにあり、税引き後の可処分所得の格差が極めて少なくなった結果、年功序列型給与体系を築いてきた日本企業(年功序列・終身雇用が従業員対策の経営手法として確立されたのは戦後です)で働く若年層従業員の可処分所得が、欧米先進国企業で働く若年層従業員の可処分所得よりかなり多くなり、50年代後半から日本の高度成長の先触れとなった3種の神器(白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫)ブームが生じました。このように庶民の生活が豊かになり始めた56年、『経済白書』が「もはや戦後ではない」と日本経済の復活を高らかに宣言したのも無理はありません。
さらに65~70年にかけて57ヶ月間の高度成長を続けた時期(いざなぎ景気)には、日本はアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国になり、超高級品だった3C(自動車=カー、クーラーカラーテレビ)が庶民にも手が届くようになりましたね。つまり日本の高度経済成長は、高額所得者への過酷な税負担を強いたシャウプ税制がもたらしたと言っても過言ではないと思います。
その結果、日本人の約80%(だったと思います)が自分たちの生活水準を「中流階層」と認識できるほど私たちの生活が豊かになったとも言えます。そこまで日本を豊かな国にするため犠牲を払ってくれた高額所得者への税負担を国際水準並みに下げたいとする政財界の主張はもっともなものだったと私は考えました。
しかし欧米先進国の富裕層は、その有り余る金を慈善団体に寄付したり、貧しい学生のための学費や生活費を支援するための財団を作ったりしています。アフリカの貧しい人たちのために医療援助したり学校を作ったりもしています。彼らは自分が稼いだお金は社会から与えられたものという認識(たぶんキリスト教精神の影響だと思います)を持っています。だから社会奉仕の目的には躊躇せず大金をぽんと出すのです(ビル・ゲイツもその一人です)。
それに比べて税負担が軽減され、可処分所得が増えた日本の富裕層が、有り余ったお金をどう使ったでしょうか。社会還元を目的に福祉団体に寄付したり、貧しい国の人たちのために使おうとしたでしょうか。そういう人たちがゼロだったとまでは言いませんが、大半の富裕層は「金が金を生む」ことを目的に不動産やゴルフの会員権、株などに投資し、いわゆる「バブル景気」の立役者になったのです。日本人の公共的意識の低さを、彼らの行動が証明しただけでした。
私は自民党政権の所得税法改定の理由のうち①については「当時支持した」と書きました。日本の高額所得層が、増えた可処分所得を、さらに自分の財産を増やすためにしか使わないなどとは予想もしなかったからです。そのことがすでに明らかになっていたのに、自民党政府は97年、まず消費税を5%に引き上げ、その消費税アップへの世論の反発が時間の経過によって沈静化するのを待って2年後の99年には所得税法を改定し、最高税率を一気に37%にまで引き下げてしまいました。
今となっては日本の税体系をシャウプ税制に戻すというのは無理です。そこで私は現在の高額所得者への最高税率(所得税+住民税)50%を60~65%に引き上げることをまず考えましたが、再考を重ねた結果、別のアイディアを思いつきましたのでそれを提案します。その理由は高額所得者の最高税率を引き上げても、たぶん高額所得者はこれからの日本の社会保障の一端を自分たちが担う責任があるという自覚を持ってもらえないと思ったからです。
そこで私の新しい提案ですが、高額所得者に対しては所得税、住民税に次ぐ第三の課税として「社会保障税」を設け、その税率は一律ではなく、所得に応じた累進税率にしたらどうか、というものです。社会保障税の累進税率については、私は税制を専門的に研究してきたわけではないので、税制を専門的に研究されている方たち(財務省主税局・各政党の税制担当者・大学教授・マスコミ各社の論客など)に考えていただきたいと思います。
いずれにせよ、そうした目的税を設けることによって、社会福祉など自分には無縁だと思っていた高額所得者も、社会保障のための目的税を負担することによって否応なく社会の一員として所得に応じた社会福祉に貢献しているという自覚を持つことになり、そうした税負担を誇りに思ってくれるようになるのではないでしょうか。
次に消費税ですが、理論上はもっとも公平な税制と言えなくはないと思います。しかしそれはあくまで机上の論理にすぎず、現実問題としては現在の消費税制を維持したままで税率をアップすると、当然のことですが低所得者にとっては過酷な税負担を強いることになります。私がネットで検索したところ、日本のように特定品目への減免処置を講じていない国はデンマーク(税率25%)、チリ(19%)、コロンビア(16%)、エジプト(10%)、韓国(10%)、タイ(7%)、ニュージーランド(12.5%)、フィリピン(12%)、シンガポール(7%)など数カ国にすぎません(知名度の低い小国は除きました)。読売新聞が社説でヨーロッパ諸国の最低水準である15%への引き上げを提案しましたが、たとえば消費税17.5%のイギリスは食料品など生活必需品は非課税にしています。
しかしイギリスが消費税をいつ導入したかはネットでは調べられませんでしたが、おそらくその当時のIT技術では同じ生活必需品といっても、富裕層にしか買えない高額商品と、低所得者が購入する安い商品とを差別化した税率にすることは事実上不可能だったはずです。
たとえば日本人にとって、絶対的に必要不可欠な米ひとつとっても、最高級ブランドの魚沼産コシヒカリは5キロで3980円、一番安い米は北海道産きららで1980円(イトーヨーカドー、ただし通常価格)とほぼ倍の価格差があります。もちろん低所得者層にとっては魚沼産コシヒカリは高嶺の花だし、富裕層が北海道産きららを買うこともまずありえません。
が、日本が消費税を導入した20年前、5%に引き上げた11年前とはIT技術に格段の差が生じています。今では米袋にタグをつけ、そのタグにセンサーをタッチするだけで魚沼産コシヒカリには10%の消費税が加算され、北海道産きららは非課税にするといった消費税の差別化政策が容易にできるのです。だから「食料品は非課税」といった生活必需品をいっぱひとからげにした消費税制にするより、同じ米でも富裕層にしか手が出ない商品にだけ課税するといったことが、最先端のIT技術を活用すれば簡単にできるし、そういう消費税制なら高級品に対する最高税率を15%くらいに引き上げても国民は納得すると思われます。
この二つの税制改革によって、少子高齢化に歯止めがかからない日本の将来の社会保障体制を確実なものにすることが可能だと思います。このブログを読まれた方のご意見をお待ちしています

年金改革について
年金問題は基本的には国民年金問題です。民間企業に勤務する人たちの厚生年金(大企業の多くは厚生年金に上乗せした企業年金制度も設けています)や公務員が加入する共済年金は問題は生じていません。
私は現在年金受給者ですが、厚生年金と国民年金を合算した額を受給しています。サラリーマンだった時代に加入していた厚生年金と、フリーのジャーナリスト(自由業)になってから加入した国民年金の両方を貰っています。社保庁で調べてもらいましたが、ダブル受給者の総数はカウントしていないとのことですが、かなりいるようです。国民年金の加入が義務付けられている20~59歳までの人の職業は、①自営業・②自由業・③フリーターなどのアルバイトやパート・そして④無職の人(学生も含む)などです。これらの国民年金加入義務がある人の中で保険料の不払い者は基本的には③と④です。この③と④の人たちをどう救済するかが年金問題の根幹を占めています。
実はこの③の人は二つのケースに分けられます。
ひとつは低所得で保険料を払える資力がない人。④の人は所得がありません。
もうひとつは、どうせ払っても早晩国の年金制度は破綻するから掛け損になると考えている確信的不払い者。この人たちは過去の社保庁への不信感を強烈に持っている人たちで、社保庁解体後も旧社保庁職員が居残って年金制度を運用する限り、年金制度への不信感は払拭できないでしょう。旧社保庁の居残り職員に対しては5年間20%の給与カット(その間給与は物価スライドするだけで原則据え置き)くらいの厳しい処置を取らない限り、この確信的不払い者が年金制度への不信感を拭い去ることは難しいと考えます。
NHKが視聴者の信頼を取り戻すため、不祥事を起こした職員に懲戒解雇や諭旨免職といった厳しい処置を取ったことを考慮に入れると、社保庁職員の組織ぐるみの、犯罪といっても過言ではない行為を免責することは国民感情からいっても許しがたいことだと思います。もちろん不祥事とは関係がほとんどないことが確認された職員への懲戒処分は行うべきではないと思いますが、懲戒処分を受けた職員900人も再雇用する(いちおう1年間の有期雇用として、その間の働きを見て正規職員にする)などという姑息な手段は政府として認めるべきではありません。この確信的不払い者に、国民年金に国民の義務として加入してもらうには、いまの社保庁解体後の年金運用機関として設立される日本年金機構が国民の信頼を取り戻すため、今後どのような施策を講じるかが試されると思います。
ここで私の年金改革案を述べる前に、読売新聞が4月16日に提言した年金改革案について検証を行ってみたいと思います。読売提言の骨子は次の4点からなります。
① 年金を受給するには、現在は最低25年保険料を支払わなければならないが、受給資格を得るための最低払い込み期間を10年に短縮する。
② 最低保障年金を創設し、10年間保険料を払って受給資格を得た人には月5万円の年金を保障する。
③ 保険金を満額(40年間)払った人の年金を月7万円に引き上げる(現在は6万6千円)。
④ 子どもが3歳になるまでは保険料を免除し、困窮世帯には保険料を免除する。
 読売が提言した年金改革案の骨子はこの4点に絞ってもいいでしょう。
 読売は「子どもが3歳になるまでは保険料を免除すれば、少子化対策にもなる」と主張していますが、若い夫婦が二人、三人と子どもを作ろうとしないのは経済的理由によると考えたようですが、とんでもない大誤解です。少子化問題については国立社会保障・人口問題研究所が調査しており、年間の出産数は73年以降減少が続き、03年には73年の54%に減っています。その原因のうち最大の要因は結婚の仕方が変わった(晩婚化・未婚化)ことにあると分析しており、これは先進国に共通な現象で、経済的理由によるものではまったくありません。つまり3歳未満の子どもがいる世帯の保険料を免除しても少子化対策にはまったくならないのです。読売は何を根拠に少子化対策にも有効と主張したのかわかりませんが、少子化問題を専門的に研究している機関があるのに、その機関の調査結果を調べもせず「少子化対策にもなる」と、自分たち(同紙の「社会保障研究会」)の根拠のない勝手な思い込みで主張されては困ります。
 それはさておき、読売提言が実現したらどうなるかを、これ以上は不可能と言い切ってもいいほどフェアかつ論理的な検証を行ってみます。つまり、読売の社会保障研究会には絶対反論不可能な検証作業をするということです。
 この検証をする前提として、読売提言は「保険を10年掛ければ年金受給資格が生じ、月5万円の最低保障年金が貰える」としており、この受給資格を得るための条件は一切設定していません(そのことは、実は何度も読者センターに確認してきましたが、改めてこの提言を書いているたったいま読売の読者センターに再度確認しました。私の思い違いではありません)。
もうひとつフェアな検証をするための前提として、国民年金への加入義務がありながら加入していない人数を調べようとしたのですが、社保庁もまったく把握していないとのことなので、とりあえず現在の年金加入者数1595万人を読売提言による年金受給者とすることにしました。
① 年金を受給できる平均期間は
81.9歳(日本人の平均寿命)-64歳=17.9年間
② 保険料を10年間払って年金受給資格を得る人の支払い総額は
14410円(現在の国民年金保険料)×12ヶ月×10年=172万9200円
③ その人が65歳以降17.9年間に受給する年金総額は
5万円×12ヶ月×17.9年=1074万円
173万円支払って1074万円も貰えることになります。なんと6.2倍もの大盤振る舞いです。国にそんな余裕があるのでしょうか。
④ 一方経済的余力があり満期40年かけた人の保険料総額は
14410×12×40=691万6800円
⑤ その人が月額7万円の年金を17.9年間受給する年金総額は
7×12×40=1503万6000円(たったの2.2倍です)
⑥ その人が10年だけ国民年金に加入して年金受給資格を得た後、30年間保険料相当額をたんす預金(一切利子がつかない)したときの17.9年間に使える額は
1074万(③の計算結果)+14410×12×30=1592万7600円
つまり満期40年掛けて月7万円の年金を貰うより89万1600円多いことになります。しかも30年間のたんす預金には1円の利息もつかないという実際にはありえない状況を設定してもです。
すでに明らかにしたように、読売提言は国民年金加入者が「10年保険料を払って年金受給資格を得る」選択の条件を設定していません。当然現在の国民年金加入者1595万人は全員この選択をすると考えるのが合理的です。そうなると身の毛がよだつような結果が生じます。
⑦ 1595万人が全員⑥の選択をした場合、国が国民年金制度を維持するために負担しなければならない金額は
(1074-173)万円×1595万人=1713兆3059億円
この金額を17.9年間かけて捻出しなければなりません。年間負担額は
1713兆3059億÷17.9=957兆154億円
なんと08年度国家予算83兆613億円の11.4倍になるのです。これは中学1年生なら簡単に出来る計算です。
 要するに読売提言は「絵に描いた餅」にもならないことがはっきりしたということです。読売提言に対する私の検証結果は、私自身にも信じがたいものだったので、6月25日に読売の読者センターにFAXし、しかるべき部署で私の検証結果に対する再検証をお願いしました。その結果が出るまで私自身の年金改革案を書くのを待つわけには行かないので、とりあえず私の提案をこれから述べたいと思います。なお読売提言に対する私の検証を読売が再検証された結果は改めてブログで報告します。読売から何の回答がなかった場合は、私の検証が正しかったことを読売が認めたということです。これはアンフェアな判断ではありません。
 では私の年金改革提言を述べます。
 まず現在の国民年金の最高支給額(満期40年保険料を払った人が受け取る年金)は月6万6千円です。この金額で事実上生活していけるでしょうか。家賃がかからない持ち家の方でも生活は絶対に出来ません(かなりの貯金があれば別です)。したがって支給年金額は憲法第25条が定めている「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」を保障する金額にすべきです。具体的金額は生活保護基準として設定されている生活費相当額(住宅費を含まない)を年金額とすべきです。ただし、被生活保護者は一切資産を持つことが出来ず年金などの収入だけでは生活できない不足分を支給されていますので、仮に東京都23区の65歳(年金受給が始まる年齢)単身者の生活費(食費等+光熱費等)約8万円を年金支給額にすべきだと考えます。そして保険料の納付期間も年金受給資格が生じる65歳になるまで延長します。
 その場合の保険料がいくらになるか、出来るだけ簡単な方法で計算します。
 まず現在の満期保険料の支払い総額は
 14410円×12ヶ月×40年=691万6800円
その掛け金に対して17.9年間に受給できる年金総額は
   6万6千円×12ヶ月×17.9年=1417万6800円
 この受給年金総額には国家負担1/3が含まれているので本人の支払い総額に対する純年金総額は計算上
   1417万6800円×2/3=945万1200円
 つまり掛け金に対する実質的受給倍率は  
1417万6800円÷945万1200円=1.5倍
 政府はこの国家負担を来年度1/2に引き上げる予定(国の実質負担増は1/2-1/3=1/6)です。一方国民年金保険料は17年まで段階的に増やし、16900円で打ち止めにすることが、いちおう決まっています。が、国の負担増が国民にはまったく見えないのです。保険料は年々上がる一方年金は増えない(厚生労働省年金局年金課の説明)からです。そこで私は国民にもっと見える形、つまり年金保険料を減らすことをまず提案します。国の負担増が一番わかりやすいからです。そうすると保険料は
   14410×(1-1/6)=14410×5/6=12008円(端数切捨てで12000円)になるはずです。この額は国の負担増1/6を保険料減額に使った場合です。
 一方私が提案する年金支給額を8万円とすると受給総額は
   8×12×17.9=1718万4000円
 そのうち国が従来どおり1/3を負担すると(つまり国が従来負担してきた1/3は受給額の増額に使い、負担増加分は保険料の減額に使うという状況を設定しました)、国民年金加入者が支払う保険料総額は
   1718万4000円×2/3÷1.5(現在の受給倍率を適用)=763万7300円
 この総額を20歳~64歳までの45年間かけて均等に支払うとすると(すでに掛け金の1.5倍の支給基準を計算に入れているので均等払いが正しい計算方式です)月額保険料は
   763万7300円÷45÷12=14143円
 端数は切り捨てて月額保険料は14140円で収まります。しかも今後9年間で保険料を16900円に引き上げる必要もありません。
 つまり現行制度をいじらず国の負担を1/3から1/2に引き上げて年金支給額6万6千円を維持するより、国民年金加入期間を年金受給が始まるまで5年間延ばすだけで、月額保険料は270円安くなり、しかも受給額は憲法が保障している「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」として被生活保護者への支給基準額(食費等+光熱費等 東京都23区の場合)相当の8万円が保障できるのです。国民に対する社会保障とは、こういう思考方法をベースに構築すべきなのではないでしょうか。
さて、ここからが私の年金改革提案の本論です。
 これだけ手厚い社会保障制度を構築しても、月14140円の保険料を払えない
人への救済策も大切です。読売提言のように免除すべきか、別の方法で保険料を払えるような仕組みを構築したほうがいいのか、それはこのブログの読者も考えて
みてください。とりあえず、私は後者の案を提案します。
 まず国民年金加入者の前年度の所得に応じて実質的保険料を決めます。支払
い保険料の上限は14140円です。所得税がゼロの人の支払い保険料を0円とし、
所得額に応じて3段階の保険料を設定します。たとえば3000円、7000円、11000
円といった具合にです。
 ここからが私の提案の画期的なところと自負していますが、不足分(たとえ
ば月額保険料7000円の人の不足分7140円)は免除するのでなく、国が代理納
付します。つまり国民年金加入者の全員が、いちおう14140円の保険料を満額
納付した扱いにします。ただし国が代理納付した金額は「融資」として扱いま
す。その金利はゼロにするのが望ましい、と私は考えています。融資の期間は
融資を受けた人が65歳になるまで、とします。もちろん途中で所得が増えた場
合は即返済(それまでの融資額全額でなくても)させます。そして年金受給資
格が生じた65歳になっても融資残高が残った人には融資残高相当額の資産を強
制的に売却処分させ、融資を完済させます。全資産を売却処分しても融資残高
が残った人には二つの選択肢を用意します。
 健康などの面で働くことが不可能と、その人が居住する地区にある福祉事務
所が判断した場合は、被生活保護者になっていただき、国は融資残高の請求権
を放棄します。その方は月8万円の年金に加え、生活保護基準で定められた限
度内の家賃を支給してもらえます。
 福祉事務所がまだ働けると判断した場合、健康的条件などで働くことが不可
能になるまでは働いてもらい、生活保護基準(年金8万円+生活保護基準限度
内の家賃)を超えた金額は強制的に返済に充ててもらいます。その後は被生活
保護者になっていただきます。この方法が年金問題を根本的に解決できる最も現実的で国家負担も少なくて済む方法だと思います。実際に国家負担がいくらになるかは専門家が計算して教えてください。