続・切腹ごっこ

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「切腹の話」千葉徳爾著

2007-11-24 | ★レビュー(本)

 この間頂いた書籍群の中から「切腹の話 日本人はなぜハラを切るか」(千葉徳爾著・昭和47年第一刷発行・発行所講談社)という一冊を読んだ。内容を要訳し感想を書こうと思う。

目次
1.切腹のいろいろ
2.生理学的問題
3.切腹の歴史
4.刑罰としての切腹
5.隣接民族の類例
6.切腹の原型と意味
7.何が切腹にかりたてるか

 副題にあるとおり著者は「日本人はなぜハラを切るのか?」、または「切腹とは何なのか?」という問いを突き詰めている。海外の百科事典にseppuku、harakiriとして載っているように、また現代人(昭和47年当時)の一般常識として知られるように「武士が己の名誉を守るために行う自殺方法=切腹」というのが本当の姿なのだろうか?と。

 まず著者は様々な時代の例を挙げることで、単純に「切腹=死に到達する手段」という認識は的を射ていないと言っている。また、異常時(戦乱の中)の切腹を考慮に入れず、平常時の切腹のみを見ただけで、「切腹=死に至ることの困難な愚かな自殺法」と決めつけるのにも否定的だ。
 著者は歴史を紐解いて調べた結果、切腹は武士だけのものでも男だけのものでもないと言っている。女性や町人、農民の切腹も珍しいものではなかったという。また切腹の発生と介錯役の出現には歴史的時間差があり、負け戦の後、敵に捕えられるのを避ける目的で速やかに死ななければならない(特に大人数での集団切腹)状況において出現発達したとも書いている。
 時代は移り、武士が宮仕えの中で主の命令によって切腹する割合が増えてくると、無念腹(内臓を掴み出すようなやり方・中世には称賛された)は支配層に抗議する形として嫌われるようになる。百科事典に載っているような切腹の形態というのはこの時代の儀式的な切腹を記述したものが多いようだ。
 さらに地域を越えて、沖縄、アイヌ、朝鮮半島、中国大陸の諸民族に似たような慣習がないのかどうかも調べている。同じとは言えないが、中国では内臓に宿るという本心を示すため腹を切り開いて見せるということはあったようだ。

 これまでのことを踏まえて著者が考える日本人がハラを切る理由というのは、次のようなことだと思う。古代においては人身供犠を原型に、「神に見放された者(武運尽きた者)」が最期に自分の真心を示すために行い、同一民族内での抗争が主だった戦乱の中ではお互いの悲壮美が共有できたために発展した。日本刀という切れ味の良い道具があったこと、根底に下腹部を刺激する生理的衝動としてのエロチシズムがあったということも大きな要因と考える。


 ‥以上が自分が極々簡単にまとめた要訳だが、だいたいの内容を分かってもらえただろうか?自分でも書いてるうちに訳分からなくなってしまった^^; 読んでる時は理解できたような気になっていても、人に伝えるのは難しい。読んだ時の面白さとか感動を伝えるのはもっと難しい。
 ↑のような大まかな流れの中にたくさんの切腹の例が記載されている。中世以前の例は男性のものが多く、明治以降(特に敗戦時)の例では女性のものが多い。切腹フェチの欲求も満足させてくれる内容だった。

☆の数で自分が感じたこの本の印象を表してみた。新情報度は自分が読むまでに知ってた情報が多かったかどうかだし、資料の貴重度は自分がなんとなく貴重なんじゃないかな~と思ってる程度の印象なので、そのつもりで見て下さい。

読み物としての面白さ ☆☆☆☆☆
新情報度       ☆☆☆★★
資料の貴重度     ☆☆☆☆★
切腹フェチの満足度  ☆☆☆★★
総合点        ☆☆☆☆★

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