自分セラピー

「自分を好きでいる」ことは人生を豊かにしてくれます。そこに気づかせてくれる沢山のファンタジー文学を紹介していきます

『太陽の戦士』

2007-02-15 16:38:39 | 児童文学
またまた、感動ファンタジーに出会いました。

『太陽の戦士』ローズマリ・サトクリフ

紀元前900年ごろのイングランド丘陵地帯のお話。

ドレムという、片腕の少年の成長物語であり、歴史ファンタジーです。

このころは青銅器時代と呼ばれ、鉄器時代に移り行く直前の時代です。
勇者と呼ばれる「金色の髪の狩人」と、牧畜を預かる下働きの「黒い人々」とに分かれ、その時代の王国を生き抜いていたのです。

この物語の主人公ドレムは、自分が片腕であることは認識しつつも、そのことで、狩人にはなれないという現実を知らずに育ちました。

まさに、この物語は、ボクたちの男性性を成長させる、象徴的な物語なのです。




無鉄砲な子ども時代には、ヒーローになりきって遊ぶことができました。しかし、成長するにつれ、自分の限界を知ることになり、自分の可能性を自分の手で摘み取ってしまうのです。

この少年ドレムは、祖父から、その現実を直面させられます。
「おまえは狩人にはなれない」と。

弓を引くための、右腕が聞かないうえに、狩人になるには、オオカミをしとめなければならないのです。

12歳の春になると、村の男たちは、「わかものの家」に共同で住み始めます。
3年にわたって修行を積み、15歳の冬に、一人ずつ順番にオオカミをしとめに森に入っていくのです。

イニシエイション(通過儀礼)ですね。
世界中に、成人になるための通過儀礼がありました。
もちろん、この日本でも。
しかし、ヨーロッパは狩猟民族でしたから、通過儀礼の形も、このような死を賭したものになるのです。

少年ドレムは、誰にも負けない槍の使い手になりました。
たくましく育った彼は、仲間たちがオオカミに殺されたり、見事にしとめるのをずっと見守りました。

そしていよいよ、春が近くなったころに、ドレムの順番が来ます。

森一番の巨大なオオカミを見つけ、彼はついにそのオオカミを追い詰めます。

静かな戦いは、一転して、オオカミとの死闘になります。

あわや、オオカミがドレムののどをかみちぎろうとした瞬間に、ドレムの親友ポトリックスが、オオカミにやりの一撃を加えます。

神聖な成人の儀式は、誰かの助けをもらってはならないのです。

この瞬間に、ドレムは、オオカミをしとめる栄誉も、オオカミに殺されるという名誉も失ってしまいます。

彼に残された道は、「黒い人々」とともに、羊を追う生活に入ることだけ。

そして、一冬が過ぎ行くころに、彼の前にかつてのあのオオカミが登場するのです。

結末は是非自分で読んで欲しいので、これ以上は書かないでおきましょう。
この物語は、男性にとって「自分を成長させる心理プロセス」が見事に表れている
名作です。

ボクが、毎年6月から始める「絵本・おとぎ話セラピー講座」では、「女性の自立のための物語」を扱っています。

この本を読んでみて、講座にぜひとも追加したい物語になりました。
男の自立・・・も、大事だよね

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