クラブボクシング@ゴールドジム湘南神奈川

普通、湘南辻堂といえばサーフィンなのにボクシングでひたすら汗を流すオッさん達のうだうだ話!

憲ちゃんの対価 (憲ちゃんシリーズ)

2016年04月21日 | あの頃 朴は若かった
憲ちゃんにバチが当たる日がとうとうやってきました。 

僕と憲ちゃんの家は山の上にあって、学校へは山の急な坂を下りて街に出て、もう一回違う山を登って行かなければなりません。

帰りはその逆でどっちにしても結構疲れます。

ある日の帰り道、家への上り坂の途中でどこからか泣き声が聞こえてきます。

後ろを振り返って街の方を見おろしてみても、誰もいません。

道の左側は笹がたくさん生えた崖になっているんですが、そっと覗いてみても誰もいません。それでも泣き声は聞こえてくるのです。

そして道の右側は登りの土手になっていてたくさんの草が生えているのですが、人が隠れることはできません。

寝ころんでいても分かってしまうような土手なんです。

「助けてぇ~」と泣き声が聞こえてきます。僕は怖くなって、帰り道に佐藤商店でアイスを買おうと思っていたのも止めて、走って家に帰りました。帰ってからお母さんに誰もいないのに泣き声が聞こえてくることを話したら、「あ、それは幽霊かもしれないね。昔、戦争の時にカンポウシャゲキ(艦砲射撃)」があって人が沢山死んだからね。」と面白そうに笑っています。

僕は怖くなって布団をかぶって寝てしまいました。

一時間くらいたってやっぱりアイスが食べたくなって、佐藤商店に行ったらやっぱり誰もいないたくさんの草が生えている土手のどこかから、泣き声が聞こえてきます。

僕は怖かったけれど土手に行ってみました。

声が聞こえる方へ歩いていきました。段々と泣き声が大きくなっていくのが分かります。泣き声が一番大きく聞こえるところに行ってみると、そこはタテにコンクリートの土管が埋まっていました。

井戸みたいなマンホールみたいな感じです。思い切ってその土管を覗き込むと、なんと!

そこに憲ちゃんがはまっていたのです。

それもよくプールで浮き輪の穴にお尻を入れるような感じ、エビのような形で土管の中くらいのところまで落ちていました。

まぬけです。

僕はびっくりして「憲ちゃんどうしたの?なにやってるの?」と聞いても、憲ちゃんは泣くばかりです。「助けてくれ~」しか言いません。

どうも憲ちゃんは僕より坂を先に上っていて、坂の下に僕が見えたので、びっくりさせようとして土管近くで待ち伏せしていたら、どういう訳かエビのような格好で土管に落ちたらしいのです。

ふ~ん、やっぱりそううことか。

というか、そんなことばかりしてるからバチが当たったんだと思いました。

おてんとうさまはいつも見ているのです。いい気味です。

でも、僕が通り過ぎてから一時間以上エビみたいな格好で土管にはまっているのはちょっとかわいそうです。

僕は憲ちゃんを助けようと手を伸ばすと、憲ちゃんはいつものように僕を巻き込もうとして強く下に引っ張ります。

これでは僕も一緒にはまってしまいます。憲ちゃんと死ぬのはまっぴらです。

そうこうしているうちに憲ちゃんはまた下がってしまいました。これはもう大人の人を呼ぶしかありません。

憲ちゃんは「置いていかないでくれ~」とまた泣きます。きっといつも意地悪とかしているので僕が放って逃げると思ったのでしょう。

でも僕はそんなことはしません。だってそんなことをしたら憲ちゃんと一緒になってしまうからです。

僕は佐藤商店のおじさんを呼んできて憲ちゃんを引っ張り上げてもらいました。憲ちゃんは助かりました。

泣きながらお礼を言っていますが、実は憲ちゃんは佐藤商店のおじさんが苦手です。

どうしてかというと、仮面ライダースナックを一個し買わないのにライダーカードを誤魔化してたくさん取ろうとしたことがばれてしまったからでした。

おじさんは「カード誤魔化しているからこんなことになるんだぞ!」ともっともですが、少し子供っぽいことを言ってたのでした。