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形而上の話を形而下に

物語のフォークロア

2010-11-09 | 民俗
小さい頃、祖母から5代前の先祖の武勇談を聞きました。お城に住み着いた怪物を退治した話でした。
祖父の曽祖父という、なんとなく想像できそうな近い先祖の話だった記憶を思い出して、先日母に聞いてみたところ
「ああ、あれはお城の石垣に大きな蛇がいたから捕まえた話だよ」
と、あっけない答えが。
子供心に一大スペクタクルと思えた話は、何のことはない話に成り下がってしまいましたが、文字を持っているいないにかかわらず、家族やの歴史は伝承という形で伝わる場合が多いのだと思った瞬間でした。

東北の歴史は文字による記録がなく、大和政権という外からの記録や考古学的アプローチから類推するのが歴史時代以前を知る方法です。
記録がないからといって歴史がないわけではなく、縄文時代から続く長い歴史は、今でも心の奥や古いしきたりの中に眠っているかもしれません。
アイヌ民族にはユーカラという叙事詩があり口伝によって伝えられています。
文字がなくても伝承の方法はあり、物語を大切にする文化もありました。

アイヌ語で物語を表す言葉は「イタク」で、恐山で有名な「イタコ」の語源とする説もあります。
柳田國男はイタコの語源を、吾妻鏡(鎌倉時代1300年頃編纂)に巫女を市子と表記されていることから市子(イチコ)からの転化と述べていますが、私は「イタク」語源説に共感できます。
死者との交流は家族の物語であり、個人の人生の物語でもあります。
部族の歴史、の歴史、家族の歴史は重なりながらも重ならない部分を残し、部族・の歴史からはみ出した家族の中の個人的な歴史はイタコの口を通して語られます。イタコはまさに物語を語る人だったのかもしれません。

同じように占いなどをする沖縄のユタは、音の似ていることからイタコの転化ではないかとも言われますが、言語的には琉球方言とアイヌ語は関連性も薄く全く別の語源によるものと思われます。
しかし沖縄方言には「話す」=「アビル」の他に「語らい」=「ユンタク」の語があって、巫女である「ユタ」と「ユンタク」の音が似ているのは「イタコ」と「イタク」の関係と同じように「物語する人」の意味を感じます。




今日の写真は、私の父方の祖父が亡くなった昭和10年代の葬儀の写真です。
当時は女性の喪服は白だったことが分かります。





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