チョコの原料が減っているらしい。
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原料のカカオに何が起きているのか チョコレートが消滅する日
Business Media 誠 12月24日(水)9時58分配信
「神の食べ物(テオブロマ・カカオ)」という意味の学名をもち、かつて富と権力の象徴でもあったカカオ。カカオは、言わずと知れたチョコレートの原料である。
【エクアドルだけで栽培されている品種「ナシオナル」を使用したものと希少品種の「トリニタリオ」を使用したチョコレート】
現在、カカオの年間生産量は、年間消費量よりも下回った状態になっている。2013年には、全世界で生産量よりも7万メートルトンを超えるカカオが消費された。そしてこの生産量と消費量のギャップが今後、さらに拡大するだろうと予測されている。
チョコレート製造メーカーの世界大手である米国のマース社と、スイスに拠点があるバリーカレボー社によると、2020年にはカカオの生産量が消費量より100万メートルトンも足りなくなるだろうと警告している。しかも、この危機を回避するのはかなり難しいと見られている。いまでは手軽に食べられるチョコレートだが、もしかしたら近い未来、一般人には手の届かない存在になるかもしれない。
カカオの生産量が足りなくなっている、と言われてもなんとも実感は湧(わ)かないが、いったいカカオに何が起きているのか。最大の問題は、カカオの生産が非常に難しいことにある。仮にカカオの苗を植えても、実をつけるようになるまでに2~3年はかかる。さらに品質のよいカカオの実が収穫できるようになるまでに6~7年は必要と言われている。カカオは幹に直接花が咲き実になる植物だが、プランテーションのような人工的な環境では、花から実になるのは全体の1~3%程度しかなく、非常にわずかな量しか収穫できないのだ。
しかも、カカオは限られたエリアでしか育たない。赤道から南北緯20度以内の範囲で、年間平均気温が27度で16度を下回ることがなく、年間降水量が1500から2500ミリメートルほどある、高温多湿な環境でないとダメなのだ。さらに肥沃で水はけのよい土壌が好ましく、強風にあおられることのない海抜700メートル以下の場所が理想的だ。
●生産量は下落の一途
そんな厳しい条件をクリアできる地域は、世界にどれほどあるのだろうか。カカオ栽培は、そもそもメキシコや中米にそのルーツがあるのだが、現在は西アフリカ、南米、東南アジアで商業用カカオ栽培が盛んに行われている。特に、アフリカはカカオの世界生産量の約70%を占めている。ところが、このエリアでも生産量は下落の一途をたどっているのだ。
生産量世界第1位で約40%を占めるコートジボワールやガーナでは、気候変動によりカカオ栽培に好ましくない乾燥した状態が続いている。ICCO(国際ココア機関)によると、2012~2013年の生産量はこの2カ国だけでも8万5000トンも減少している。
だがカカオ生産者の間では、気候変動よりも恐れられているものがある。それは、カカオの病害がまん延する危険性だ。過去を例にとると、1980年代に主要なカカオ生産地であったブラジルは、病害により生産量が半分に落ちるほどダメージを負ってしまった。マレーシアも1980年代にかなり大規模なカカオ栽培をしていたが、同じく病害により生産量が急激に減ってしまった。ちなみにマレーシアでは、より収益が見込めるパームオイルなどの栽培にシフトしている。
病害による被害は深刻で、ひとたび病害がまん延すればカカオの生産量が激減し正常な状態に戻すのが難しくなる。ICCOの試算によると、カカオの世界生産量の30~40%を損失してしまう可能性がある。そこで、病気に強いカカオの品種改良といった取り組みがなされているのだが、これもそう簡単にはいかないようだ。
●注目されている改良品種
カカオには、4つの品種がある。一番メジャーなのは、「Forastero(フォラステロ)」という品種で、世界で流通しているカカオの80%以上を占める。普段口にしているチョコレートのほとんどが、この品種を使用したものだろう。
フォラステロ種が「外来の」という意味を持ち南米を指すのに対して、「純血」という意味を持つのが、最高品質とされる「Criollo(クリオロ)」という品種だ。古くはマヤ文明時代から存在し、中米を中心に栽培されていた由緒ある品種だ。病気に弱くかなり繊細な品種であるうえに収穫量も少ないので、全世界で2%ほどしか生産されていない。だが、その味と香りは他と比較にならないとも言われている。
次に、ハリケーンや病害などでカカオが壊滅したトリニダード島にフォラステロ種を移植して、残っていたクリオロ種と交配して出来たといわれる品種、「Trinitario(トリニタリオ)」がある。この品種は、全世界で10~15%ほど流通している。
最後に、エクアドルだけで栽培されている品種、「Nacional(ナシオナル)」がある。エクアドルのアマゾン地帯が原産と言われており、芳醇なカカオのフレーバーに加えてフローラルでスパイシーなのが特徴になっている。
これらのカカオをもとに、品種改良の研究が進められている。中でも有名なのが、エクアドルで開発された「CCN51」。エクアドル在来種であるナシオナル種を品種改良したもので、病気に強いのに加え、従来品種の7倍のカカオ豆を収穫できるのが利点だ。残念なことにフレーバーや香りが少し劣ってしまうので、専門家の評価は厳しい。
しかしいま、ホープとして注目されている改良品種がある。中米にある研究機関(CATIE)で開発された「CATIE R-1」と「CATIE R-4」、そして「CATIE R-6」だ。このうち、「R-4」と「R-6」は、2009年に世界最大級のチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」で、その質の高いフレーバーが評価されてインターナショナル・カカオ・アワードを受賞している。カカオのクオリティは、フレーバーが70~80%を占めていると言われるため、これは大きな成果だといえる。
●カカオ不足の背景
このように、中南米では成果が少しずつ出始めている。ブラジルのカカオプランテーションからフォラステロ種を移植してカカオ生産を発展させてきた西アフリカも、病害に強い品種改良が急務となっている。同じカカオの品種を使用していても、国により気候や土壌が異なるため、中南米で開発されたハイブリッドの品種が同じような効果をもたらさないからだ。
カカオ不足の背景にあるのは、熱帯雨林の伐採などによる気候変動や生態系のアンバランスによる病害の発生はもちろんのこと、そしてなによりも、「神の食べ物」に魅了された人間の大量消費に他ならない。クリスマスにチョコレートを食べる、または食べたという人も多いだろう。遠くない未来に、チョコレートが消え行くかどうかは自分たちの行いにゆだねられているのかもしれない。