数日前から気温が30度近くまで上がるようになり、蒸し暑い日が続いている。今日(06/12)は曇天だが、時折り雲の間から強い日差しが射すようにあたりを照り付ける。午後から雨の予報だったが、お昼少し前にカメラを持って出かけてみた。この時期普通のハンカチは役不足で、タオルハンカチが必携である。100mも歩くと汗が滲んでくる。あまりカメラ向きのコンディションではなかったが紫陽花を撮るにはこの時期しかない。例によって公園に入ると、日差しは高い木の葉によって遮られるものの、風の動きが無いので、益々蒸し暑くジットリする。しかし、屋根だけの「お休み処」のベンチに座ってじっとしていると、微かに涼を得ることが出来た。
意を決し紫陽花を撮り始める。この公園では、勝手に生えたか、人為的に植ええたものか、比較的よく見かける。そこかしこにあり、そして今が旬の花である。更にちょっとした沢筋に紫陽花コーナーがあり、たくさんの種類が植えられている。個々の名前はともかく、花の色として白、水色、青、紫、赤の五種類があるだろうか。色だけでなく形もまたそれぞれに違っているから面白い。
FUJICA FUJINON 55mmF1.8(M42)
今回使用するレンズはFUJICA FUJINON 55mmF1.8である。2019/05/05、前後キャップ付きで入手、「初期型」の「初期型」というModelらしい。絞り環はシルバー梨地仕上げ、レンズはモノコーティング、開放測光用の爪は無し、金属製ローレット、金属製レンズ銘板というもの。我田引水で言えば最もカッコ良いModelだ。外観のスレも少なく、Focus Ring、絞り羽根ともに問題なし。肝心のレンズは拭き傷も少なく、カビ、曇りも無い、なかなかの美品である。
あまり色を誇張せずにあくまでも自然な色合いが持ち味というレンズらしい。それでもどんな「自然な色合い」なのか、その持ち味が気になるところである。赤と緑が比較的濃厚に出るらしい。近距離撮影では被写界深度が比較的浅く、立体感のある写真になるらしい。この「空間表現」が素晴らしいという評もある。流れる汗を拭きながら、撮影を終えて帰ってきたが、画が気になり、すぐにPCモニターで確認してみた。
成る程、ちょっと抑えられたような感じの発色、色合いは総じて見た目に近いかもしれない。全体として優しい色合いで、どの色もコッテリというようなことはない。強調発色が好きな方は迫力に欠けると思うかもしれない。或いは物足りないと思うかもしれない。しかし、フィルムで撮ったような懐かしい優しい画に味があると思う、或いはワザとらしい強調されたような発色が嫌いな方には向いているように思う。
紫陽花は日なたより、ちょっと陰になった所で咲き、清楚な色を見せる花である。決して地味と言う訳でもないのだが、日本の風景の中で、この季節(梅雨)よく似合っている花の一つではないだろうか。
色といい、形といい、これほど造形に富む花は他にあるだろうか。花の魅力の一つはグラデーションにあると思うが、その自然が作り出す驚異的な変化は、つくづく宇宙そのものであると思う。
中でも白はジンクホワイトで、写真では一見白飛びしているように見えるが、他の色に比べて独特の完全無反射の白色である。これはカメラやレンズの性能というより、花自体の色の個性だろう。
赤い色も抑えられたような発色で、輝くようなケバさは無い。
瑞々しさ、或いは生々しさというよりは、千代紙で造る切り絵のような、或いは日本画のような枯れた雰囲気がある。襖絵にも似合いそうな竹久夢二の色使いである。この傾向は紫陽花全般に言える花の特徴かもしれない。この「淡い色合い」を自然に写し出せるというのが、このレンズの秀逸な所なのだろう。撮影最短距離も45cmまで寄れるので、紫陽花の花の大きさに対して不足は無かった。
立体感のある「空間表現」というのはどうだろう。絞りは大方F4位で撮っているが、開放値を使わなかったのは、やはり被写界深度を少し大きく取るためである。その分背景がうるさくなったものもあるが、大方は狙い通りである。そこに、独特の立体感のある「空間表現」は特別に感じられるだろうか。また、機会があれば、このレンズでケバケバの花も撮ってみたいと思う。
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