―作画と撮影ポイント―
岩間倶久/金園社
1990年10月10日発行の版数なしの本。これにはシリーズがあるようで、「花のある風景写真/1983.3」、「海のある風景写真/1987.4」、「石仏道祖神のある風景/1987.10」と続くらしい。いずれも「作画と撮影ポイント」のSub Titleが付くムック本。「花のある風景写真」はシリーズの最初の本となる。発行当初から24年ほどになるが、この間に世の中随分変わった。今やほとんどデジカメが主流である。この世界では激変といってもいいかもしれない。ほんのふた昔ほど前のことなのに。しかし、写真そのものの撮り方(或いは写真についての考え方)はデジタル化されることは無いから読んでもなかなか楽しい。
この「花のある風景写真」は初心者向けに作られたようだが、全体として何か精神論的でもあるし、我田引水的でもある。言いたい事は解らないでもないが、もう少し理論的な説明に力を入れて欲しかった。逆に「良い写真」というものが、いかに説明し難いものなのかよく解る。ともすれば独善的、自画自賛だったりする訳だが、結局のところ自分が「良い」と、「すばらしい写真だ」と評価できればよいわけで、それ以外のことは二次的、三次的要素になるのかも知れないと思ったりもする。
しかし、一点だけ納得するとしたら、写真を撮るということは「被写体の中に撮りたいと思う点を探し出して、それを最大限引き出す努力をすること」であるということになる。色であれ形であれ、その魅力を最大限に引き出すために、フィルム、カメラ、レンズは勿論、天候や風の動きにも気を配り、絞り、シャッター速度、ピントといった条件を決め込むということに他ならない。最後は「被写体からの光を、いかに最大限魅力的に取り込むか」だけである。背景や構図も含めて、すべては主題を引き出すための工夫に他ならない。
・花芯(おしべ、めしべ)にピントを決める。
・花の顔はこちらに向けて、花びらの脈、葉脈が最も濃く鮮やかに見える所から撮る。
群像の中の一人の例え(米粒のような花でも、こちらを向いてさえいれば)
・光の反射を避ける。
上下左右に移動して、光の反射を避ける。(光の照りは点描写になり葉の片隅に白く残る)
・曇天のときは空を入れない。
曇天は散乱光=近接撮影なら確実に花の色が演出できる。
・画面は遠景1/3。
・平面的な背景(壁、蔵など)は天地左右いずれかに空間を作る(立体感、存在感を生む)。
心得九個条なんてのもあったりするが、ちょっと飛躍が過ぎるようで、今ひとつ具体性に欠ける。5月の花(あやめ、かきつばた、菖蒲など)の話は初めて聞く。早朝に咲く男花なんだとか。5月5日の端午の節句で使う菖蒲湯もこの辺が由来なのかも。
・標準Lens・・・・片目で90mm、両眼で50mmが人の見る風景で、ここから50mmは標準Lensと言われる。これを境に広角と望遠に分けている。標準Lens50mmはメーカーの本流。最高の技術を結集した主力のLensである。
・広角・・・・山は低くなる。
広角で遠景を写しても主題にはならない。(接写してこそ効果あり)
・望遠・・・・山を引き寄せ、高く見せる。
三脚のことについて、ちょっと解説があったが、結論としては「先ず1~2年は三脚なしで撮影に専念」、「画面や写し方のことも解らないで三脚を求めるのは無謀」ということであった。耳が痛いなぁ。
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