M645においては標準レンズとして扱われている。35mm版にするとその焦点距離は50mmに相当する。シリーズ中最も軽量、コンパクトで、今風に言えばパンケーキと言えなくも無いがちょっと無理か。M645には最も似合う5群6枚のレンズだと密かに思っている。
ということで、先ずはボディに付いて来た「SEKOR C 80mmF2.8」だが、外観は悪くないのに何故かフォーカスリングが重過ぎる。このまま力任せに回すと、ヘリコイドが傷むに違いないと思い、別のものを探すことにした。そこそこのものが出て来たので落札。商品が到着してすぐに開封してみたのだが、何と外観は悪くないのに同じようにフォーカスリングがカクカクする。思わず、はぁ~~、とため息が。いくら何でも3本目には手が出ない。
今度は方針を変えて、グリス交換を自前で行うことにした。2本もあれば、何とかそのうち1本くらいはまとめられるだろうという甘い考えで。
そのために、道具作り、材料探しに奔走する。レンズを破損させないためには適切な道具、最適な材料が不可欠ということで細々と用意した。「SEKOR C 80mmF2.8」の修理の手順はなかなか見つからなかったが、同等で参考になるものはNet上に多数あった。勇気を貰ってチャレンジする。ことの手順を全て記載する訳にも行かないが、初めてのことでもありなかなか大変だったことは確かである。
グリス劣化でフォーカスリングが回らない問題
レンズの中でグリスを使用しているのは確かにフォーカスリングだが、この問題には2つの原因があった。1つは確かにNetの中でも良く見掛けるヘリコイドのグリス切れ。ところが実はもう1つ細目ねじの方のグリス切れというものがあり、どちらか或いは両方のグリス切れが原因でフォーカスリングは滑らかに動かないのである。今回はヘリコイドではなく細目ネジの方が原因だった。勿論、ものはついでで、両方を清掃して新しいグリスを塗布したのだが、この辺のことは分解して初めて知ったことである。
クリックボール
絞り環のクリックを作っているバネと玉(ベアリング球)のことは、Netでも見掛ける。その苦労話を読んで、ほぅ~と他人事のように読んでいた。実際に自分でやってみると、あれほど「注意するように」と書いてあったのに案の定、分解時にその姿も見ないうちに何処かへ飛んで行ってしまった。もう1本同じレンズがあることで油断があったのかも。グリスの塗布も終わって組み立てるとき、別のレンズからボールだけ拝借。今度は逃さないように透明ポリ袋の中で分解した。やっと姿を現したボールはφ1.6mmであった。今度はこれを清掃したレンズ側に組み込む段になって、またもや飛ばしてしまった。どこに転げたものやら部屋中探せど見つからない。
まさか、ボール欲しさにまたレンズを調達するのもどうかと思う。そこで考えたのがボールペンだ。ボールペンのペン先のボールを取り出してみた。なるほど「ペンの「書き太さ」はそのボールの大きさに等しい」という何某かの定理のようなことが判った。極太1.6mmのボールペンの玉はφ1.6なのだ。取り出した玉のインクを拭き取って、今度は飛ばさないように(コツがある)組み込んでみた。思ったとおり、何とも心地よくクリックが決まるではないか。いや~我ながら実に名案だった。
いくつもの困難を乗り越えて完成したのがこれ。チリ、ホコリ、カビなし、ヘリコイドはスムーズ、絞りクリックは快適。無限遠点もキッチリ決まった。往年の美しさを取り戻し、燦然と輝く様は何ともいえない。
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