数ある広角の中でも比較的無難に使われる45mmF2.8。45mmは新旧型が3つあって、いずれもなかなかの人気で、安く落札するのは難しい。私の場合、特に初期型というか旧型というかフォーカス環のラバーが碁盤目模様になっているのが気に入って、(性能はさておき)そればかり狙っている。どうも、あのキャタピラ型ラバーはお気に召さないのである。(キャタピラ型の方が新しく、レンズ性能もよいはずなのだが)
で、今回やっとのことで落札したのがこれ。
何と、予想はしていたものの「ヘリコイド不調、絞り羽根粘り、レンズカビ」の三重苦レンズだった。このままではとても使う気になれない代物である。救いは外観のスレが少ないことくらいだ。
広角は難しいと聞いていたので、あまり積極的では無かったが、こうなったら止むを得ない。そろそろと分解し気を付けたつもりが、無限遠点を見失ってしまった。そもそも今までのレンズと構造が違っており、注意すべきポイントが判らなかった。また、分解最後の最後、細目ねじの部分がどうしても分解できなかった。今まで分解したレンズもそうだったがフォーカス環が重くなるのはヘリコイドのグリス切れというより、この細目ネジの部分のグリス切れが原因だった。今回も同様だが、分解できないため僅かな隙間から古いグリスを何とか取り除いて新しいグリスを入れ、フォーカス環を220度(∞遠点~最短まで)嫌になるほど往復して馴染ませた。完全とは行かないが使用できるレベルになった。細目ネジは分解出来なかったので位置調整は不要だったが、かなり根気のいる作業だった。
絞り羽根の清掃は予備知識の通り注意して慎重に進め、何のトラブルもなく完了した。確かに羽根一枚一枚をエタノール風呂に入れて清掃するのは気を使う作業だが、絞り機構を組み立てて、羽根がシャキシャキ動くと苦労も吹っ飛ぶというものだ。
ここからが難しかった。∞遠点が合わない。組立て、分解を5~6回繰り返した。終いにはノギスで測定し、(どこがどうなっているのか)作図しながらの作業になった。結局、45mmはMiddle Lens Unitが固定され、Front及びRear Lens Unitが移動する構造で、基本となるMiddle Lens Unitの位置で∞遠点が決まる。この位置がまた微妙で、ヘリコイドの中受けスペーサーの120度ステップと中受けスペーサーのヘリコイド嵌め口(72度ステップ)の2つで調整することが判った。(本来、ここに細目ネジの位置も関係する)
更に、マウントスペーサーは別のヘリコイド上にあり、中受けスペーサーと直進の進度が異なる2重の構造になっているらしい。
そして、作図検討した結果、あと1.0mmに迫り、2つの調整を組み合わせて1.0mmを何とか調整することができた。∞遠点調整は、レンズをカメラに付けてみないと判らないという非常に面倒な調整である。出来れば、ポイントを押えておき、元の通りに復元するのが望ましいのだが、それが出来れば苦労は無い。
悪戦苦闘の末、何とか∞遠点を確保し組立てを完了した。
これこそ、ヴィンテージと呼ぶにふさわしいものはないだろう。
パンフォーカスで撮るのが楽しみだね。
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