今回の旅の最大のイベント、
祇園で超有名なお茶屋「一力亭」での邦楽同好会お浚い会。
ところがその夢のような世界に負けるとも劣らない事が起きた。
まさに夢と現実、バーチャルとリアルの偶然の出来事があった。
この話をこれからいたしましょう。
この話のスタートは今年春に遡ります。
スミダマンの知人の仕事打合せをしていた時、たまたま京都の話になった。
するとその知人は奥さんを連れてきて、志賀内泰弘著の「京都祇園もも吉庵のあまから帖」を是非読むように薦められた。
ちょうど寝る時に読む本を探していたので早速購入。
一巻を読むとすっかりハマリ六巻全て購入。
現在六巻目の第三話まで読んだ。
小説のストーリーの構成は一巻5話の短編小説でできている。
舞台は京都・祇園を中心として京都の名所旧跡、
京都人の生活・文化等が描かれている。
そして、結末は人生経験豊富な祇園甘味処の女将「もも吉」の人情の機微に通じた言葉が悩みを抱えた人々の心に響く人生ドラマが展開する。
登場人物を紹介すると「もも吉」は祇園の一見さんお断りの甘味処「もも吉庵」の女将、元芸・舞妓でお茶屋を営んでいた。
「美都子」もも吉の娘・京都の個人タクシーの美人ドライバー。
ときおり「もも也」の名で芸妓も勤める。
かつては舞も人気もNO.1だった。
「隠源」建仁寺塔頭の1つ満福院の住職。
「もも吉庵」の常連。
他に舞妓になったばかりの「奈々江」
老舗和菓子店風神堂の社長秘書「朱音」等々
そしてアメリカンショートヘアのネコ「おジァコちゃん」だ。
晴天で初夏の日差しを受けながら、安井金比羅宮からテクテクと祇園の街の裏の方から歩いて来て、この小説にちょくちょく出てくる神社を目指して来た。
これが「京都祇園もも吉庵のあまから帖」に載っている祇園エリアの地図。
宿泊しているホテルの通り八坂通り。
そして一昨日アップした安井金比羅宮。
今年春に完成して7年振りに当地で「都おどり」が戻ってきた
祇園甲部歌舞練場、京都五山の雄・建仁寺、京都五大花街のチャンピオンの祇園甲部のお茶屋がつらなる花見小路通その入口に弁柄色で目立つお茶屋のランドマーク一力亭。
そして路地に小さく鳥居を構える有楽稲荷など小説によく登場する場所の地図が記載されている。
この有楽稲荷大明神は織田信長の末弟の織田有楽斎を秖っている。
有楽斎に因み「楽しみが有る」とされ、芸能の稲荷社になり、芸妓の技芸上達、茶屋の商売繁盛の信仰を集めている。
創建は不明で、大正期の初めにこの地に祀られたとみられる。
因みに東京有楽町の地名は有楽斎から来ているという説がある。
又7年前に大ヒットしたNHK大河ドラマ「真田丸」の中ではザ・スパイダースのメンバー井上順が有楽斎を演じていたことでも記憶に残っている。
又、建仁寺の塔頭正伝永源院は織田有楽斎が再興し、その墓所もあるという。
テクテク約1時間弱歩いて来て相方が喉が渇きお茶したくなってお店を探していたが、
なかなか見つからず、ようやく店外にメニューが置かれたお茶屋風の店の扉を開け何かに導かれるように入って行った。
「ごめん下さい。ごめん下さい」と幾度も声をかけても返事が無い。
しかしこの日に関してはどうしてもこの店に入りたいと思い呼び続けたと相方は後に言っていた。
因みに相方もこの本の読者だ。
しばらくして通されたこの部屋を見た瞬間ピーンと来た。
カウンター内の造りは違うがまさに小説内の甘味処「もも吉庵」のイメージそのものだ。
当店は昔は4代続いたお茶屋で今はcafe冨月(ふうげつ)で昼間は甘味処、夜は一見さんお断りのBARに成っている。
TEL 075-561-5937
月曜日 定休
http://gionfu-getsu.jimdo.com/
お店の造りは見た所このカウンターコーナーに続いてスミダマンが通された応援ソファーコーナー、奥には中庭が見渡せる堀ごたつテーブルの和室があった。
部屋の設えもまさにお茶屋風。
素晴しい雰囲気です。
甘味処のカフェのメニューも手作りで写真付。
すごく凝っていて、どれも目移りがしてしまう。
まるで小説もも吉庵の名物「麩もちぜんざい」が出てくるようなラインアップだ。
スミダマンがオーダーした金平糖ソーダフロート750円。
緑寿庵清水さんの金平糖を使いソーダのカラーチェンジができる。
素晴しい。
まさに祇園のお茶屋の名に恥じない力作の作品しかも良心的プライス。
これだけでも旅人の心を鷲掴みにしてしまう。
相方はお豆腐白玉御膳1200円
今月の季節あんは宇治茶を使かった抹茶あんだそうだ。
この気使いも小説に出てくるその時々の麩もちぜんざいのイメージにダフッてくる。
ビジュアル的にも一流で本当に素晴しい。
しかし、ここまでのワクワク感は心躍るドラマの序曲、プロローグであった。
この女性がcafe冨月の若女将でとてもチャーミングな女性。
頭も切れしゃべり出したら止まらない。
そして彼女の口から予期せぬ話がどんどん出て来て「エー世の中こんなことがあるのだ?」とビックリ仰天の連続であった。
話を聞いていく内に彼女が小説の主人公の娘、美都子に完全にかぶってきた。
因みに彼女の母は祇園の芸舞妓だったとは小説のもも吉とそっくりだ。
そして彼女が私の席に持って来て説明をしたのが「京都祇園もも吉庵のあまから帖」第六巻。
スミダマンも、一力亭での芸舞妓の話の種にとこの第六巻を持参して来たので若女将に見せるとお互い一瞬沈黙が続き驚ろきの目に変わった。
それからはこの小説に関する秘話が泉が湧くが如く続き感動感激すら覚えた。
・作者の志賀内泰弘氏がよくカフェ冨月に来て小説の内容の事を話しては確認、了解を取りに来る
・もも吉庵の主人公もも吉のモデルは創業100年を超えるお茶屋の「吉うた」のお女将髙安美三子さんで当店若女将の母大女将の大仲よし
・モデルのお茶屋「吉うた」さんは2019年3月火事の延焼で焼けてしまった。
このお茶屋さんは祇園小唄作詞の舞台に成った歴史的お茶屋。
・ここは生えている松は2度の火災に耐え不死身の松だ。
・建仁寺塔頭の満福院のモデルはひょっとして建仁寺塔頭両足院かも(後日アップ)
京都新聞をご覧のあなたへ
志賀内泰弘「お茶屋が焼けても女将は前向き」
火の出た日はうちの79才の誕生日でした。
燃え盛る火を見ながら思いました。
これは神様が燃やしてくださったやと。
人生は何度でもやり直せる、と人は言わはるけど、人は今まで培ったものをたくさん抱えているからゼロからのやり直しはできしません。
そやから神様が「全部燃やしてあげるさかい、ゼロから始めなさい」と燃やしてくれはったんやろう思うたんどす。」
「京都祇園もも吉庵のあまから帖」六巻巻末特別インタビュー(P313)に作者志賀内泰弘氏が「Cafe冨月」
のことを書いてくれたと最後に若女将が六巻のこの部分のページを開いて説明してくれた。
今回のビックリするような出会い、ご縁は単に偶然な出来事では片付けられない必然性を感じた。
この京都には1200年という歳月の積み重ねの重みが人の人生や、文化の彩を織りなしている。
新ためてこの街のすごさを知ってしまった。