
著者 鳥越碧
加賀友禅、結城紬、有松紋、仙台平、鍋島更紗、佐賀錦、小千谷縮、久留米絣・・・
今も残る伝統工芸の歴史に刻まれた男女の愛と生きざまを、情感豊かに描いた時代小説集。
織物や染物に携わった人々のお話を様々に紡ぎ出す著者も見事でした。
短い物語8編ですが、それぞれのお話の内容がガラリと変わり、引き込まれるようにアッという間に読んでしまいました。
『へび女房』

著者 蜂谷涼
元お馬番の夫は腑抜けて頼りにならず、幼い子供たちや義母を養うため、きちは薬として珍重されるマムシの加工品を扱う露天商を始める表題作。
アメリカ南北戦争の功労者を軍事顧問として日本に留めるために嫁がされた大名の姫君を描く「きしりかなしき」。
黒田清隆に求愛されながらも榎本武揚への想いに迷う美しい芸者・小せんの物語「雷獣」。
西洋かぶれの日本人高級官僚の夫婦の間に紅毛碧眼の赤ん坊が産まれる「うらみ葛の葉」の全4編を収録。
「きしりかなしき」が女性の心理状態を細かく書いていて、どんでん返しもあったりで一番面白く読みました。
女性の視点で書いた時代物は、読んでいて胸にグッとくるものがあり、心模様が分かっていいもんですね。