
著者 沢木耕太郎
旅のバイブル『深夜特急』で世界を縦横無尽に歩いた沢木耕太郎。
そのはじめての旅は16歳の時、行き先は東北だった。
あの頃のようにもっと自由に、気ままに日本を歩いてみたい。
この国を、この土地を、ただ歩きたいから歩いてみようか……。
JR東日本の新幹線車内誌「トランヴェール」の連載を単行本化。
沢木さんの文章は真心が感じられて大好きです💕
「ごめんなすって」というタイトルに?…
二十二、三でフリーランスの道を歩みはじめたとき、
新人ボクサーに対するトレーナーのような役割を
果たしてくれた編集者がいた。
その編集者は、晩年、俳句を作っており、
死後、遺族から私にその作品群が託された。
遺稿集を出すためである。
鮮やかだったのは、残された俳句に闘病のことや死への
恐れといった類いのことがいっさい詠(よ)まれていないことだった。
しかし、ただ一句だけ、「辞世の句」と読めないこともないものが
残されていた。
奥様にうかがったところによると、
まだ歩ける体力が残っているときに
ホスピスの見学に行く途中で見た桜を詠んだものだろう、
ということだった。
「花吹雪ごめんなすって急ぎ旅」