桜園の桜を堪能した後は、薬園保存園を覗いてみましょう。
桜園の南側に周ると、薬園保存園が低い竹垣をめぐらせています。
ウンナンオウバイが黄色い簾を垂らす脇を進み、売店の中を抜けて保存園へと歩を進めます。
桜の季節、園内は限られた花しかみえませんが、
イカリソウの可憐な花が、柔らかな陽射しの中で寛ぎの表情を見せていました。
振り返えれば、売店が桜の花に包まれていました。
売店でコーヒーを飲んでゆくことにしましょう。
7、8人掛けのテーブル席が二つだけの小さな売店は、花の季節は満席のことが多いのですが、この日は運良く空席を見付けることができました。
この場所は、植物園に通う常連さん達の憩いの場でもあります。
鳥を撮影する井上さん、植物写真を趣味とする高橋さんはご自身の作品を一冊の本に纏め、売店に寄贈されています。
井上さんの「一期一会の野鳥アルバム」は、小石川植物園に10年以上も通い詰めて撮影した70数種の鳥の写真が、解説付きで収められています。
東京都心に位置する小石川植物園で、こんなに沢山の野鳥の種類が観察できることに驚かされますが、その姿を根気よく追い続けた井上さんの熱意にも驚嘆すべきものがあります。
高橋さんの写真集「小石川植物園の四季」は、小石川植物園に咲く花を撮影し、印象画のような作品に纏めたものですが、季節の移ろいに心ふるわせる作者の柔らかい感性が見えてくるようで、見る人の心を癒す一冊となっています。
桜の季節は売店も混雑しますので、長居をして、それらの本を鑑賞するのはマナー違反ですが、客が少ない時間帯であれば、店の人に頼めば、快く井上さんと高橋さんの写真集を見せてくれるはずです。
これからの季節、はらはらと舞う桜の花びらの下で、無垢な野鳥や心和ます花に想いを寄せ、ふくよかなコーヒーの香に包まれれば、至福の一時を過ごせるのではないでしょうか。
※他の記事へは 小石川植物園 ちいさな花旅 index をご利用下さい。
他の旅の記事へは 旅の目次 をご利用下さい。