日本庭園に続く土橋の上に子供達の笑顔があります。
橋の下を覗くと、大きな錦鯉が餌を求めて群れていました。
目の前のイロハモミジが花色に染まっています。
土橋を渡り旧東京医学校本館の正面に立つと、今を盛りの桜が池の上に枝を伸ばしていました。
地表の真際まで枝を伸ばしたその枝先へ、淡雪のように咲き連なる花を求める、人の輪ができていました。
池の縁では桜が、子供と鯉の戯れを見守っています。
安寧な、平成な世を象徴する春の一時が、ゆったりと流れています。
隣に広がる梅園は、すでに主役の座を降りて、ハナモモだけが彩りを添えていました。
そんな梅園の片隅で、花びらを退化させて、実を付けそうもない、あの酈懸梅が今年も枝に実を付けています。
冷静に考えれば、雄蕊と雌蕊が揃っているので、酈懸梅に実が成るのは当然ですが、見かけで判断されるのは世の常ですから、私も少しは身だしなみに気を付けたいと思います。
ん?何の話でしたっけ。
梅園を過ぎた辺りで、鮮やかなハナズオウが人の目を集めていました。
花蘇芳の蘇芳とは、紫がかった赤色ですから、このハナズオウの色はイメージと異なります。
この木の花は、周囲の緑とよく調和するので、それが評判の良い理由なのかもしれません。
ハナズオウに目を奪われ、殆どの人が素通りしますが、ちょっと待って下さい。
左手奥で、オオリュウキュウバイが白い清楚な花を咲かせていました。
春にフィットする花色は白と主張しているように見えます。
花嫁が白いヴェールに包まれるように、白はあらゆる色に調和するので、新しい季節のスタートにぴったりです。
白い花に埋もれてオオリュウキュウバイの下に立つと、今まで歩んで来た道々の、全てのしがらみを捨てて、新たな道へと踏み出して行けるような気がしてくるのです。
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