邦画ブラボー

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「女が階段を上る時」感想

2009年07月29日 | ★人生色々な映画
夫を交通事故で亡くし、生活のために
銀座で雇われマダムをしている圭子(高峰秀子)。

うわべは華やかだけど裏に回れば・・
というわけで、
圭子の周りの様々な人間模様を面白可笑しく
時にほろりとさせながらテンポよく話は進んでいく。

キラキラと光輝く夜の銀座、
バーのインテリアも「レトロモダン」で素敵。

時折はさまれるナレーションは、圭子の独り言のようで
しみじみと聞き惚れてしまった。
多くも無く少なくも無く、
しかも説明的でなく、
絶妙のタイミングではさまれる。
(余談ですが、今のNHKの大河ドラマをこのあいだちらっと見たら
ナレーションがすごく耳についてしまったのですが・・)

菊島隆三のさすがの脚本、デコちゃんの上手さによるものだ。

黛敏郎の軽快なメロディが作品を都会的に彩る。

出演者は
けち臭さ全開の小沢栄太郎、計算高い森雅之、ひたすら可笑しい加東大介
若い仲代達矢、ちらっと出ても存在感大の沢村貞子
同じくちらっと出てもいやらしく上手い中村鴈治郎
やり手の細川ちか子マダム、
可愛い小悪魔団令子、光り物が断然似合う淡路恵子など
いずれ劣らぬ達者ぞろいなので
楽しくないわけが無い。
主役の高峰秀子はもちろん、
人物ひとりひとりの腹の中、思いが
浮き上がってくる脚本、巧みな演出、
役者の一流の演技が三位一体となって極上のドラマに仕上がっている。

特に、
ちゃっかり屋の若いホステスを演じている団令子が良かった。
彼女が出てくると
パアッと画面が明るくなるよう。
ユーモラスでコケティッシュでムチムチしていて・・
時には変な髪形で・・・
デコちゃんとはまた違うリズムの台詞まわしも
いいアクセントになっていた。
黒澤の「椿三十郎」でも
入江たか子とのまったり母娘がいい味出してましたよね。

劇中、おんぶに抱っこで
頼ってくる身内にうんざりして
圭子が泣くくだりは、
小さい頃から
職業として女優をやり家計を支えてきた
高峰秀子の人生そのものとだぶった。

シビアな内容は
ユーモアで巧みに味付けされていてカラリとした味わいだ。
まるで彼女のエッセイのようである。

バーの階段を上る圭子の足取りは
物語の最初と、
最後では
微妙に違っていた。

実はこの映画を再見したのには
映画のクレジットに
衣裳:高峰秀子と書かれていたように
デコチャン監修の
衣裳を見たかったというのもひとつあったのです。
長くなりますので、またにしますね!

監督 成瀬巳喜男
製作 菊島隆三
脚本 菊島隆三
撮影 玉井正夫
音楽 黛敏郎
美術 中古智

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9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
うっふっふ~ (りら)
2009-08-01 07:21:06
むっふっふ~
このビデオはこちらの日本専門ではない貸しビデオ屋にあるんです~。

私、病気で戻った実家と普段の生活のギャップがとても生々しく感じました。
華々しい生活に見えて、出自はこんな感じなんだろうなぁ・・・と。

細川ちか子!好きなんですよ~。
確かTBSの大昔のドラマ「守ルモ攻メルモ」に出ていた記憶があるんですけど・・・・
返信する
りらさんへ (ブラボー)
2009-08-01 16:47:07
そうなんですか!意外なものが
あるんですねっ

私もあのアニキの情けなさに
深く感じ入りました。
そんな兄に
「そんなだからだめなのよ」(女房に逃げられるのよ)と言ったり、
見舞いに来た細川ちか子の思惑を
見抜いたりしている
しっかりものの圭子とあろうものが
平凡な幸せに憧れてほろっと
騙されるくだりがなかなか面白かったです。

私も細川ちか子大好きです!!
「晩菊」も最高ですよね。
そのドラマみたいです!


返信する
Unknown (シバタン)
2010-09-09 12:52:09
また出没しますw
映画のストーリーはおぼろげにしか覚えてないんですが
高峰さんの、衿から帯揚げにかけて
さりげなくスッと指で直す仕草、
「おーー!!コレ、パクろう」と思いました。

パクれるような、そんなレベルじゃ全然ないんですが…。

若い頃の仲代達矢は日本人離れしたギラギラの目光線で、すごいですよねー。
今も別の意味ですごく濃いですが。
返信する
シバタンさんへ (ブラボー)
2010-09-09 16:27:41
わっ!

私もその仕草覚えています!
素敵ですよね。
着物が日常着だった頃の
古い映画を見ているとそういう意味でも
とっても勉強になります。
生きたお手本と申しますか・・
さりげない動作も
なかなかコレが身につくまでが・・
年季でしょうかねえ・・

仲代さんは「そのまんま日本映画史」
みたいな存在ですよね。
確かに濃い!
返信する
デコ様の本 (シバタン)
2010-10-11 23:37:31
『高峰秀子の流儀』を読み始めました。
子役からスターになってりまったがために
ずいぶん苦労された人なのですね…
この映画のストーリーにも似た、親族一同の生活を背負って立つという。。。
それを受け入れた上での動じなさ、謙虚さを書いてる本のようです。

勉強させていただきやす!
返信する
ミスタイプです… (シバタン)
2010-10-11 23:40:14
>子役からスターになってりまったがために

スターになってしまったがために

の間違いです…
返信する
シバタンンさんへ (ブラボー)
2010-10-12 06:35:43
「流儀」は本屋で見るたび
「お楽しみ」にとっておいて
じっくり読もうと
思っているのですが
そろそろ我慢が出来なくなっています(笑)

女としての生き方、勉強になりますよね!
モチロン着物の着方も!
返信する
『流儀』ヤバイっす (シバタン)
2010-10-17 18:29:13
何度もすみません。

いや~~~~
ページをめくる度に驚愕する本でして
1ページごとに「未熟でスミマセン」と思います。
なので、なかなか先に進みません。

デコちゃんて、「物事の本質以外はどうでもいい」という人のようで
場合によっては「冷たい人」「怖い人」という印象を与えると思うのです。
本人はそれも「興味ない。」とバッサリ斬るでしょうが。

寂しくてすがって来る人に「人の時間を奪うことは罪悪です」と言い放てる強さが美しい。

でもダンナ様とはラブラブなんですよねぇ
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シバタンさんへ (ブラボー)
2010-10-17 22:27:15
強い人ですよね~~

「流儀」読まなくっちゃと
焦っております。

前に読んだデコちゃんご自身が書いた本に
乙羽信子さんが新藤監督と
不倫状態で苦しんでいた頃、
同じ女として見るに見かねて
乙羽さんに意見した・・ことが書かれていて、
男気?がある人だな~~と
思いました。

私もかねてから
そんな彼女のハートを射止めた
松山善三さんとはいったいどんな方なのだろう??
と激しく興味を持っています。
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